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南アニュース・IZINDABA IZINDABA 第13号 2006年9月10日

クワズールーナタール州における結核の蔓延に寄せて

日曜の朝はいつものんびりとコーヒーを飲みながらSUNDAY TRIBUNEに目を通すのですが、 今朝(10日)は一面の"KZN'S TOWN OF DEATH"という記事にショックを受けました。


トゥゲラ・フェリーというKZN中部の村に結核が蔓延し、特に現存の治療薬が全く効かないXDR型(Extreme Drug Resistant) ですでに52人が亡くなっているのだそうです。通常の結核は月R250で6ヶ月の治療をすれば回復に向かいますが、MDR型 (Multi Drug Resistant)は回復までにより長い時間と多大な費用がかかり、このXDR型は感染後16-30日で死に至るものです。 トゥゲラ・フェリーのスコットランド教会病院では月に2-5人のMDR型患者を確認しており、看護士もすでに2人亡くなっています。 特にHIV感染者は抵抗力が弱いため、結核に感染すると病状が急速に悪化するといわれています。


結核患者の治療は、病棟を別にしたり、看護士は感染を避けるための防護をしたりしなければなりませんが、このような地方の、 リソースの乏しい病院ではそれが十分に行われているとはいえません。病室の清掃員も亡くなったとの証言もあります。 以前この病院に3ヶ月入院していた患者は、"毎日、目の前で人が死んでいく。もうたまらなくなって、家で療養できるよう 医師に頼んで退院させてもらった"と言い、村のリーダーは、"以前は毎週末どこかで葬式があったが、今では毎日だよ。 ここでは人がハエか何かのように死んでいく"と絶望的です。


少し前に、夕食をとりながらニュースを見ていて、貧困、病気、失業とありとあらゆる問題が報道されているのを見て、 "何で黒人にばかりこんなに問題が起きるんだ"とパートナーのサンディーレがつぶやきました。私も"何でだろう"と、 ずっともやもやと考えています。


先日、スタンガーからミニバスタクシーを乗り継いでダーバンに帰ってくる途中、ムシュランガという超高級住宅地にさしかかり 、タクシーの外の景色と中の乗客の姿を見ながら、"みんなまじめに一生懸命生きているのに、どうしてこんなに差があるのだろう" と悲しくなりました。誰もがムシュランガに住めるようになるべき、と言っているのではありません。まじめに働いても貧困から抜け出せず、 働きたくても職がなく、結局は病気にかかってしまい…、というような状況を見ながら、知りながら、それでもまだ自分の富やポジション のことばかり考えている人が多いこの社会を、怒りを通り越して情けなく思います。自分だけが幸せなら他人はどうなっても関係ない というのでしょうか。


やはり本日(10日)付のSUNDAY TRIBUNEに、マハトマ・ガンジー氏の孫のエラ・ガンジーさんが寄稿しています。 9月11日はガンジー氏の無抵抗平和運動のきっかけとなった"SATYAGRAHA"というミーティングがジョハネスバーグで開催されてから 100年目にあたります。


エラさんは、"私たちはこんにち生活のあらゆる局面でなされている暴力行為を止めるよう社会を変えていかなければならない。 しかし、私たちの多くは他の人たちがどのように生きているかに全く関心を持たずに暮らしている。"と言い、"ガンジーは、 平和な世界へと進んでいくためにHUMANITY(人間性)というビジョンに基づいて考え、行動し、生きた。SATYAGRAHAの記念のお祝い をするときに改めて考えなければいけないことは、今、現代社会に生きる私たちは彼の教えを無視してしまってはいないだろうか、 私たちは世の中を変革するために自ら立ち上がって行動できるだろうか、ということである。この挑戦に対しては 、同じような考え方を持った人々が協力し合い、行動を起こしていくしかないであろう"と言っています。


このメッセージを読んで、胸の中のもやもやが、少しだけ晴れたような気がします。"何故?"の疑問は残しながらも、 まず自分ができることを考え、行動すること、そして気持ちの通じ合う人たちとコミュニケーションをとりながら、 より大きなネットワークを作っていくことが重要であると強く感じました。

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