ホーム > 活動 > 活動日誌 > 南アニュース・IZINDABA > 第3号

活動地域のMAP

IZINDABA 第3号 2003年5月11日

メーデーバス事故死亡者49名、キンバリーにおいて合同葬儀

5月1日メーデーに、労働組合(COSATU)の集会会場に向かうバスが誤ってダムに落ち、51名が亡くなりました。乗客のほとんどは、北ケープ州キンバリー近郊の町役場に勤務していた労働組合員で、自由州クワクワで行なわれるメーデーの集会に向かう途中でした。自力でバスから脱出して救助されたのは10名。彼らの証言によると、明け方まだ暗く霧も深い中、バスは道を間違えダムへ向かう坂を一気に降りて行き、まるでブレーキが利かないようだったと言います。バスの中は騒然とし、やっと止まったと思ったら、あっという間に水が入ってきたそうです。窓ガラスは小さく、なかなか割れずに、何とか外に出られたのは11名だけでした。バスの中から助けを呼ぶ声が聞こえてきても、彼らにはどうすることもできません。そのうち声も聞こえなくなってしまったということです。2名がやっとのことで岸まで泳ぎ、近くに住む男性に助けを求め、男性は自家用のボートを出し救助に向かいました。その間9名は冷たい水の中、沈んだバスの上に辛うじて乗り救助を待ちました。しかし一名は待ちきれなかったのか、泳ぎ出したのですが、途中で溺れてしまったということです。バスは2台で出発し、先頭のバスが会場に到着してかなり経ってももう一台が到着しないのを不審に思い、何人かが途中まで引き返し事故を知りました。知らせを受けた会場は、 メーデーのお祝いが一転して弔いの場となってしまいました。亡くなった51名の中には、その前の週に結婚式をあげたばかりの人もおり、ほとんどが家族の中で唯一の稼ぎ手だったということで、政府や労働組合はできる限りのサポートをすると表明しています。葬儀には大統領以下、労働組合事務総長、各大臣、共産党委員長などが駆けつけ弔辞を述べました。事故の原因はまだ明らかになっていませんが、非常出口が使えるようになっていたか、ブレーキなどのコンディションや、定員オーバーでなかったか、などを調査中です。


凶悪犯罪やエイズ、飢饉など、人々の生活を脅かす要因が多い南アフリカですが、中でも交通事故は年々ひどくなってきているようです。トレンディドラマの主人公が、 大企業のトップが、休暇帰国中の在外大使が、そして数ヶ月の赤ちゃんが、また今日も交通事故で命を失っています。自分自身や友達が運転していて事故を起こす場合、 大概はスピードの出しすぎや飲酒運転です。それも高級車で。自業自得と言えなくもありません。一番悲惨なのは、コンディションの悪い乗合タクシーや、タクシードライバーの不注意運転による事故です。この場合、被害者は大半が女性と子供たちで、 被害者は一度に10人以上になってしまいます。先日クワズールーナタール州で起きた事故は、2台の対向する顔見知りのタクシードライバーがふざけて追突する真似をしていて、結局避けきれず追突してしまったというもので、13名の子供たちが犠牲になりました。私も運転していると、頻繁に大なり小なりの事故を目撃します。日本で血だらけの人が倒れている事故を目撃することなどはめったにないでしょう。ミーティングに遅れてきた人が“事故渋滞に巻き込まれて”というので、言い訳だろうと思ったらその夜のニュースで大事故が報道されていたなどということがよく起こります。政府は“ALIVE ARRIVE”などのキャンペーンで取締りを強化し、交通事故を減らそうと努力しているのですが、何と言ってもこればかりは一人一人が注意して運転するしかどうしようもありません。こちらの高速道路は、朝晩の渋滞時以外は比較的すいており、車線も多いので快適に走れます。ですので、高級車に乗っている人たちは、 ついスピードを出したくなってしまうのでしょう。200キロで捕まった、などという話をよく聞きます。私は個人的に、BMWを運転するドライバーのマナーの悪さに腹を立てています。後ろからあおられたり、いきなり目の前に割り込んできたりするのは、決まってBMWなのです。で、さすがに私も頭に来て“バカヤロー!”なんて怒鳴ったりするのですが、これが今また問題になっている、“ROAD RAGE(運転中に腹を立てる)”によって殺人にまで発展してしまうことがあるのです。もし私も古いシビックではなく、やはりBMWを運転していて、相手に十分対抗できるとします。 くやしいので追いかけて、抜いたり抜かれたりするうちに事故を起こしたり、“止まれよ!”といってけんかになり、クリケットバットで叩き殺されたりする(実際に起こった)可能性もあるわけです。歩行者に対するマナーも大変悪く、信号のない横断歩道では車はほとんど止まりません。先日も歩いて買い物に行く途中とても怖い思いをしました。私はすでに横断歩道を渡っていたのに、車は止まらず、もし私も止まらなかったらはねられていたでしょう。この国では、アパルトヘイトの制度と同様、道にも差別があります。高級ヨーロッパ車を運転する人が一番上、次が一般中型車、小型車、ミニバスタクシー、一番弱いのが歩行者なのです。結局当時のシステムそのままの優劣意識がそこにあり、他人を思いやる気持ちは全く見られません。運転していて“お先にどうぞ”なんていうドライバーに会ったら、どれほど感激することか!ほとんどがすきあれば“一台でも抜いてやろう”というドライバーばかりです。人々が心の奥底に持っている怒りや、何かもやもやしたものが、運転中につい出てきてしまうのでしょうか。大都会のみならず、アフリカでさえも人々はいらいらしています。 ちょうどこの記事を書いている時に、ニュースで“ミニバスタクシーのドライバーに対する訓練のプログラムが始まる”という報道がありました。ソウェトのタクシードライバー450名が、基本的な運転マナーや乗客への配慮、ビジネスの経営の仕方などを学び、タクシードライバーとしての自覚と責任を身につけるというものです。まじめに講習を受けてもらいたいものです。

▲ トップへ