IZINDABA 第7号 2004年4月29日
総選挙でANC大勝。議席数の3分の2強を確保
大変長らくご無沙汰してしまいました。言い訳ではないのですが、南アはここしばらく際立ったニュースがありませんでした。それは国が安定してきている証拠でもあるといえるでしょう。
民主的な国家として再スタートして10年、南アは少しずつ、着実に前進しています。 4月14日に3度目の民主的な総選挙が行なわれました。結果は予想通りANCの大勝で、国レベルでは69.68%、279議席を獲得しました。2位はDA(民主連盟)の12.37%、50議席、3位はIFP(インカタ自由党)の6.97%、28議席となっています。投票率は76.73%、約1,500万人が一票を投じました。ただ、こちらは投票前にIDブックを持って自分で登録をしに行くという手間がかかることと、今回は投票日がイースター休暇に近く、ホリデーに出かけてしまった人も多かったことなどで、総投票者数は前回の選挙よりも減っています。また、若者達の間には無関心や政治離れが広がっており、テレビのインタビューで"自分が投票したところで何の変化もない" と言っている若者たちも見られました。これもある意味で南アが"普通の国"になってきている証とも言えます。
ANCの汚職を追求する独立民主党 国民党が消える
今回の選挙で特に注目されたのは、元PACのパトリシア・デリル女史が新たに立ち上げた、インディペンデント・デモクラッツ(独立民主党)で、全国レベルで1.73%、 7議席を獲得しました。このパワフルな女性リーダーは、これまでにANC政府内の汚職を徹底的に問い詰めてきました。彼女には、これからも議会で大多数のANC相手に奮闘して欲しいと思います。そして逆に今回票数を大幅に減らしたのが、NNP(新国民党)で、たったの1.65%、7議席しか獲得できませんでした。国民党が消える、つまりアパルトヘイトが完全に終焉したと言えるでしょう。
西ケープ州とKZN州でANC主導へ
州レベルでは、西ケープ州でANCが45.25%を獲得し、いよいよANC主導ということになります。問題はKZN(クワズールーナタール州)です。得票率はANCが47.05%で38議席、IFPが36.87%で30議席、DAが8.36%で7議席、他に3政党がそれぞれ2,2,1議席を獲得しています。選挙前にIFPとDAが連立政権を組むという話が出ていましたが、それでもANCの方が1議席上回っています。ANCは州知事を出したい意向ですが、IFPはこれを譲らず、今になって選挙は公正に行なわれなかった、などとごね始めています。州内では94年、99年の選挙の際にANC対IFPの政治暴力や犯罪が大きな問題となりましたが、今回の選挙は平和的に行なわれました。ANCは州の安定のためにIFPと共同で州を治めていこうという考えのようですが、IFPの頑固なリーダー、ブテレジ氏は負けを認めず、ANCに屈するのもプライドが許さないのか、何とか自分達の有利にことを運ばせようと必死です。 しかし今、自分達の権力やポジションを考えているときではありません。まず今回の選挙での州民の選択を尊重し、何といっても州民の利益を第一に考えて欲しいものです。現在KZNで大きな問題となっているのは、ダーバンから北西に約250キロの州都ウルンディについてです。私も何度か訪問したことがありますが、役所の大きな建物とホリデーインが一軒あるだけの小さな田舎町で、議員や役人は小型飛行機や車でせっせとここへ通わなければなりません。仕事の効率は悪いし、明らかに税金の無駄遣いです。ズールーの王様をリスペクトする気持ちはわからなくもありませんが、そろそろ現実的になり、伝統を守りながらも実際の政治とは切り離さなければならないのではないでしょうか。KZNの顛末はまた後日報告いたします。
目覚しい女性議員の進出
先ほどパトリシア・デリル女史とその政党についても簡単に書きましたが、今回の選挙で特筆すべきは女性の活躍です。総議員数の32.8%、131議席が女性で占められます。特に喜ばしいのは、ANCの女性議員数が大幅に増え、279議席中104名が女性です。政府内の汚職が問題になっている中、女性議員の大半は常に国民の利益を考え、真摯に仕事に取り組んでいます。皆超多忙でありながら、家庭や子育てとも両立させているスーパーウーマン達です。そして何より、様々な問題に対して常に話し合いによる平和的解決を目指しています。南アが着実に国を再建してきている最大の要因は女性たちのパワーであるといっても過言ではありません。各大臣から州政府のスタッフ、地方の学校の先生方に至る、女性たちの努力と活躍がこの国の支えとなっているのです。将来、女性大統領の誕生もありえるのではないでしょうか。期待しています。