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IZINDABA 第8号 2004年5月4日

4月27日フリーダムディにターボ・ンベキ大統領2期目の就任

 4月27日、プレトリアユニオンビルにおいて、ターボ・ンベキ大統領の2期目の就任式が行なわれた。雲ひとつない真っ青な冬空の下、世界各国の首脳、国内外の政界、 経済界要人が招かれ、華やかで荘厳な式典となった。 大統領の宣誓スピーチの後、軍隊のパレード、ジャンボジェットや空軍機の会場上空飛行など、一通りのセレモニーが執り行われた。今回の式典で特に注目された招待客はFIFAの主要メンバーで、2010年のワールドカップ開催国決定に好印象を与えようというものである。 そして、派手な"悪妻"と連れ立って平然と式典に出席した、隣国ジンバブエのムガベ大統領の姿に、多くの南ア国民は"我々の税金を使って彼らをもてなすなんて許せない"と怒りをあらわにしていた。ちなみに"悪妻"の名はグレースなのだが、"何がグレースだ、ジンバブエをディスグレース(辱めて)しているくせに"と言われている。私が以前ジンバブエを訪問した際、テレビのニュースで彼女が地方の女性達のコミュニティーミーティングに出席した姿を見て驚いたことを覚えている。一人だけパーティーか何かと間違えたようで、頭のてっぺんからつま先までショッキングピンクで着飾っていたのだ。 "これがファーストレディー?"と疑問に思ったが、それ以降公の場で彼女を見ると、必ず一番派手で目立っている。昨年のウォルター・シスル氏の葬儀でもあまりにも"場違いな"服装をしていた。明らかにリーダーの失策のために国民が生きるか死ぬかの苦しい思いをしているとき、まるで自分には関係ない顔をして"ショーウィンドウから抜け出してきたような"姿で堂々と現れた姿を見て、かつてのイメルダ・マルコスを思い出してしまった。すっかり話がそれてしまったが、式典の後、ユニオンビル前の広場では夜までコンサートで盛り上がっていた。


 今回の式典には3人の老婦人達が招かれていた。一人は故オリバー・タンボ夫人のアデレード、もう一人は故ウォルター・シスル夫人のアルバティーナ、そしてンベキ大統領の母で故ゴバン・ンベキ夫人のエパイネットとそれぞれ激動の時代を生き抜いてきた女性達である。今回の式典に彼女達はどのような気持ちで出席したことであろう。ンベキ大統領の母エパイネット(88)は、今でも出身地であるトランスカイ(東ケープ州)のングチングワネという村に住んでいる。彼女の村には2000年にやっと水道の設備が整えられたが、供給が始まらず、今でも川へ水を汲みに行っている。電話線もついたし、灌漑設備も整い、高校も建った。しかし電話線はつながらず、灌漑設備は故障したまま、 高校には未だに電気も引かれていない。そんな中、彼女はコミュニティーの人々と裁縫とビーズクラフトのプロジェクトを立ち上げようとした。しかし自治体が全く協力してくれず、宙に浮いたままになっている。彼女は"ングチングワネのような村は未だにトラディショナルリーダーたちと自治体が反目しており、コミュニティーのために協力し合おうという姿勢が見られないのが問題である"と言っている。中央では民主化10年を祝っているとき、全く何も変わっていない地域がどれほど多いか、大統領の母のストーリーからも理解できる。もちろん彼女はいくらでも優雅で楽な暮らしができるはずであるのに、自身のルーツであるトランスカイを離れず、村の人々と共に質素な暮らしを続けている。ンベキ大統領にしても、一般の政治家のように自分の地元の利益を優先させることはしない。もししようとしても、この母が断固として拒否するに違いない。


 もう一人、ンベキ大統領に大きな影響を与えている女性、それが大統領夫人のザネレ・ンベキである。就任式をテレビで見ていて、一瞬"ファーストレディーはどこ?"と思うくらい地味な服装で彼女は現れた。伝統的なコサの衣装で現れるかしらと思っていたので少しがっかりしたが、小さな黒のベレー帽に黒っぽい飾りのないドレス。ただ彼女の瞳だけが輝いているのが印象的だった。後日新聞にこんなコメントがあった。"彼女の徹底したアンチ・クチュール(反高級服飾)は、若い世代のどんどん派手になっていく夫人達への強い批判表明ともとれるし、彼女自身、着飾った軽薄な女性達とは一線を画しているというフェミニストの態度ともとれる。そして何より、ファーストレディーである以前に、彼女がどのような人物であるか、また政治的にもどのようなポジション、力を持っているかをはっきりと表している"ンベキ大統領が賢明なリーダーシップを発揮し、 南アフリカを再建、発展させていっている陰には、2人の素晴らしい女性達がいることを改めて認識した今回の就任式であった。


 さて、第二期ンベキ内閣の閣僚であるが、28ポスト中、女性が43%にあたる12ポストを占めることになった。特に重要な教育、厚生、外務、内務大臣などに女性が任命された。副大統領は引き続きジェイコブ・ズマ氏で、前妻のコササナ・ドラミニ・ズマ女史は外務大臣である。他にも、警察大臣のチャールズ・ンカクラ氏と、内務大臣のノシヴィウェ・マピサ・ンカクラ女史は夫婦である。ANC内にはパートナーであり、同志でもあるというパターンが多く、かつては反アパルトヘイト、そして現在は国の再建と発展という共通の目標に向かって活動するパワフルなカップル達である。州知事についても、9州中4州(北西州、東ケープ州、北ケープ州、フリーステート)が女性知事となった。これまで問題の多かった東ケープ州も、女性知事の下でぜひ建て直しをしていって欲しいと思う。KZN州については、ANCのシブシソ・ンデベレ氏が知事となり、州閣僚3ポストをIFP(インカタ自由党)から選出するということで一応落ち着いた。


 ということで、民主化10周年の新内閣がスタートした。何度も言うようであるが、南アフリカは女性の存在を尊重し、その意見を受け入れ、その働きを重要視するようになってきている。民主化10周年で一番祝福できるのはこのことではないかと思う。

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