南アニュース・IZINDABA IZINDABA 第9号 2004年10月31日
南アフリカの医療の現状
南アフリカの近況をお届けするはずが、半年ぶりのIZINDABAとなってしまいました。現在、新聞を賑わせているのは、副大統領ジェイコブ・ズマ氏の汚職疑惑です。発端は、軍需品購入の際に関わった企業や国会議員らが賄賂を受け取ったのではないか、という告発からでした。ここにズマ氏のファイナンス・アドバイザーであるシャビール・シャイク氏が関わり、現在公判中です。次期大統領候補といわれているズマ氏だけに、今後の展開が注目されます。この件に関しては、また追って報告したいと思います。
今回は、南アの医療についてお話しします。南アに住み始めてから8年、幸いこれまで大きな病気やけがもなく、病院へは虫に刺されて膿んだときと、くらげに刺されて腫れあがったときの2回行っただけでした。新聞やテレビのニュースで医療費や医療保険に関してあれこれと取り上げられていても、これまでは他人事のようでした。しかし、今回“急性腎炎”で医者にかかり、初めて南アの医療について考えることになりました。
日本への一時帰国からもどる飛行機の中ですでに足がむくみ始めていたのですが、そのうち治るだろうと軽く考えていました。しかし日に日に状態が悪くなってゆき、熱も出て呼吸も苦しくなってきたので、とうとう近くの私立病院の救急に駆け込みました。倒れそうになりながら尿や血液の検査をし、レントゲンを撮り、薬をもらって帰ってきたのですが、全く状態が変わらないため、3日後にまた救急に駆け込みました。今度は即入院かもしれないと言われ、広い病院内を車椅子に乗せられて腎臓専門の医師の部屋まで連れていかれました。もうろうとしている中、また改めて住所や名前を記入し、症状の説明をしなければならないのにはうんざりでした。その上、もう一度尿検査と、心拍の検査(コンベア-ベルトの上を歩き、だんだん早くなって走るエクササイズをさせられた) があり、本当にそのまま入院かと思いましたが、薬で様子を見ようということになりました。このとき、体重は普段より6キロも増えていて、肺にも水が溜まっていました。薬がよく効き、しばらくゆっくりすれば回復するだろうと言われほっとしたのもつかの間、毎日のように病院から請求書が送られてきたり、電話がかかってきたりするのです。まず、救急の窓口への支払い、担当のドクターには別に支払い、もちろん専門医と薬代も別請求。 検査とレントゲンもそれぞれ別会社。しめて3300ランド(約6万円)也。これが医療費の現実なのだと実感しました。
南アには国民健康保険のような制度がないため、個人で保険会社の医療保険(メディカルエイド)に入り、月々多額の保険料を支払わなくてはなりません。医療保険に入っていない(入れない)人々は公立病院に行きます。私立病院に比べて医療費は低額ですが、急に具合が悪くなって駆け込んでも、すぐに診てもらうことは難しいでしょう。とにかくいつでも大混雑なのです。設備も古くなってきており、ドクターの数も常に足りない状態で、 また地域によっては医療機器や治療薬が不十分なところもあるようです。第一、地方には病院自体がない村がたくさんあります。そのような地域では、やはり地元の祈祷師やハーバリスト(薬草を調合する)に頼るしかないでしょう。40年近くも前に心臓移植の手術を成功させているこの国は、いまだに医療のアパルトヘイトが続いているのだ、と改めて感じました。