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活動地域のMAP

TAAAの活動日誌 2014-2015年

2015-12-14 南アフリカ

イナラ小図書室完成


 イナラ小はジョージ・ンベレ高(ウムズンベ高より校名変更)と共に今年度より図書活動の対象校となりました。パートナーのサンディーレの母校であることから、私自身かなり前から両校を訪問してはいたのですが、対象校として支援ができるようになりうれしく思っています。

 高校は数年前に、小学校は最近新校舎が建設され、設備的にはよくなってきています。しかし、高校の図書室には蔵書がほとんどなく、全く利用されていない状況だったことから、TAAAから本の寄贈、図書委員会の設置や司書教師への指導を行うことで図書室のシステムが整い、図書室が利用できるようになりました。
 イナラ小は新校舎の建設が始まった時、1教室を図書室として利用できるよう、本棚の設置が約束されていたそうです。ところが、建設終了時点で本棚は設置されず、学校側では途方に暮れていました。

 そのようなタイミングで明治大学商学部の船橋さん、ゼミの皆さんから学校支援のお話をいただきました。
 当初はいただいた寄附金で家具の本棚を数本購入する予定でしたが、広い教室なので、プロジェクトから少し資金を足して本棚を取りつけることにしました。
 今年度中に学校側でテーブルといすを設置し、1月の新学年より正式に図書室として利用されます。

 イナラ小の司書教師であるクマロ先生は、TAAAやELITS(教育省図書部門)の教師研修会に参加して図書活動の十分な知識を身につけており、すでに図書委員会も設立しています。
 これまでは移動図書館車からの本を利用して活動を行ってきましたが、学校図書室が完成して大変喜んでおり、来年の活動計画もたてているようです。
 クリスマス休暇中も学校に出てきて図書室開設の準備を行うと話していました。

 イナラ小、ジョージ・ンベレ高両校の校長、そしてサンディーレも母校へのサポートを心から感謝していると話していました。

(平林薫)


2015-11-10 南アフリカ

地元初の有機農業促進イベント


 9月9日に地域内のEsibaniniホールにて有機農業促進イベントを開催し、対象校39校の担当教師と生徒が集いました。他にも、カウンターパート団体、自治体職員等が参加し、合計130名を超える出席がありました。

 それぞれの対象校は自分たちの学校菜園で収穫した野菜を披露し、生徒たちは順番に有機農業に関する詩や寸劇、ポスターを見せながらの発表等を行いました。 彼らの素晴らしい発表には、他校の教師や生徒、ゲストが感嘆の声を上げていました。
 また、卒業生グループを代表してMthwalumeグループのNgidi氏がスピーチをしましたが、熱のこもった話しぶりに会場から大喝采があがりました。

 Mr.HaighはEnaleni農場として展示を出し、出席者のモチベーションを高めるスピーチをしました。カウンターパートの州教育省Mrs.Zamisaと州農業省Mrs.Gidaからは活動促進へのメッセージ、州環境省Mr.Zamaとウムズンベ自治体Ms.Mlhanguからも出席者への激励の言葉をもらいました。

 TAAAはカウンターパートのURDOメンバーと準備段階から共同作業を進め、当日はURDOメンバーが中心となって進行し、事業終了後の活動のまとめ役としての大活躍してくれました。会場のセッティングや飾り付けなど、すべてTAAAスタッフが行い、また、軽食の一部を卒業生グループメンバーや保護者に調理してもらう等、手作り感のあるイベントとなりました。
 生徒が小さいため出席させられなかったジュニアプライマリーの教師からは、“私の生徒たちも詩や歌を作ったので、校内でこのような発表の機会を設ける”と話していました。

 対象地域で、今回のような有機農業を促進するイベントが開かれるのは初めてのことです。イベントでは対象校と事業関係者の連帯感が強まり、事業終了後もそれぞれが活動を盛り上げて行ってくれることを確信しました。

(平林薫)


2015-10-07 南アフリカ

小学校から高校へ引き継がれる菜園活動

 小学校から活動に参加した生徒たちが、高校に進んで菜園委員会メンバーとして活躍する例がよく見られるようになりました。 そして、彼らのお陰で、高校の菜園がとてもよくなってきています。例として、トゥルベケ小学校があげられます。この小学校は全校生徒が菜園活動に従事しており、活動は生徒の学校生活の一部となっています。活動は自然科学の授業にも取り入れられ、畑作りの成果が成績にも影響することから、生徒たちは熱心です。州農業省の地域菜園コンテストで3位に入賞するなど、菜園に情熱をもやすドラドラ校長のリーダーシップの下、活動がますます活発になってきています。

 この小学校からシボングジュケ高校に進んだ生徒たちの活躍によって、以前は停滞ぎみだったシボングジュケ高校の菜園はどんどん良くなってきており、また、生徒の有機農業の知識も向上しています。 実際に高校14校で行った有機農業の知識を問うテストでは、シボングジュケ高の生徒の正解率は平均87%と1位になりました。小学校で十分に知識と技術を習得した生徒が高校に進み、畑作りに情熱を持った生徒が菜園委員会メンバーとして活躍している結果です。

  早い時期に楽しみながら畑作りを学び、継続して活動を行うことが重要であることを改めて感じています。彼らのなかから将来就農を目指す生徒たちが出てきています。「継続は力なり」。それには、私達支援する方は、焦らずに待つことも大切です。

(平林、久我編集)


2015-09-18 南アフリカ

Culture Dayについて思うこと


対象校を訪問すると、よく生徒達がズールーの伝統ダンスを練習している姿を目にします。 ドン、ドン、ドンと威勢のいい太鼓に合わせて、思い切り足を蹴り上げる独特な踊りです。 学校間で伝統ダンスのパフォーマンスを競う”Culture Day”に向けて練習しているのです。 私は以前は練習風景を微笑ましく眺めていました。 「対象地域のような田舎で、ズールーの文化がしっかりと継承されているんだな」と。 実際、写真の通り、彼らの踊りは本当にほれぼれするほど素晴らしい! 地方における若者の文化継承は教育省の方針のようで、プロジェクトマネージャーの話によると、生徒たちはかなり多くの時間を練習に費やしているようです。

しかし、普段の授業が全くもって不十分で、特に英語ができないために、授業が理解できず、それゆえ将来の道が閉ざされている生徒たちを知るにつれ、教育省が後押しする熱心な練習ぶりを少し複雑な気持ちで見るようになりました。

もちろん、自分たちの文化に誇りをもち、継承していくことは大切です。多民族・多文化国家であり、黒人の文化を劣ったものとみなすアパルトヘイト時代を経た南アフリカにおいては、格別に重要だと思います。 しかし、この練習によって、ただでさえ不十分な授業が削られ、ただでさえ不足している教師たちは、基礎学力に充てる時間をダンス指導に奪われています。伝統ダンスをマスターすることで、将来南アで食べていく道が拓けるのならいいでしょう。 しかし、現実はそうではありません。

私は、ズールーの伝統ダンスは芸術の域に達する素晴らしい文化だと高く評価していますし、その素晴らしい文化の継承はとても大切なことだと認識しています。 しかし、そのために、不利な立場にいる田舎の生徒たちが基礎学力を習得する時間が削られていけないと思っています。 バランスが大切なのではないでしょうか。 特に若者失業率の高い対象地域においては(自治区の若者(15-34歳)の失業率は62.6%。全国179自治体中8位)。

  (久我)


2015-08-30 南アフリカ

“My Dream” スピーチコンテスト


シノクボンガ中学校は、元ルトゥーリ高のマカンヤ先生と司書のドルンゲレ先生がしっかりと活動をしています。 マランヤ先生は、TAAAがコンテナ図書室を寄贈したルトゥーリ高校で司書教師をしていました。図書委員会生徒たちの自主性を育てあげ、生徒主導のイキイキとした図書室を作り上げた伝説の先生です。
昨年末に、シノクボンガ中学校に教頭として赴任になりました。

そんなマランヤ先生の指導の下、司書教師のドルンゲレ先生は、整理整頓がいきとどいた図書室を作っています。 
この中学校で、"My Dream"プロジェクトのスピーチコンテストがありました。 自分の将来の夢を英語で作文にして発表するコンテストです。 1位になったのはソーシャルワーカーを目指す8年生のシンピエさん。 9年生を相手に堂々の優勝です。シンピエさんは、日々活発な図書活動が行われているバンギビーゾ小学校出身です。 バンギビーゾ小の司書教師のザマ先生が熱心に指導してくれていた成果だと感じました。 2位になった9年生の女子生徒の夢は科学者でした。

スピーチコンテストに優勝、入賞した生徒たちには、TAAAから一冊づつ本のプレゼントをしました。 家には本が一冊もなく、本は借りることはできても、自分の本がない生徒たちにとっては、“My Book”は宝物です。

笑顔が可愛いシンピエさんですが、ドルンゲレ先生の話によると、母親は蒸発し行方不明で父親はアル中。 年老いた祖父の面倒をみながら家事一切をこなして暮らしているとのこと。 「彼女の生活は苛酷です。でも、制服をしっかり洗濯して清潔な身なりで学校にくるから、しばらくは気づかなかった。彼女は毎日宿題をこなしてくる優等生なんです。 将来の夢がソーシャルワーカーなのは、きっと彼女自身が助けられた経験があるからでしょう」。 この地域では、シンピエさんのケースは、けして例外ではありません。

小さな肩にたくさんの荷物をかかえて生きている生徒たち。 彼らのために、私達が本が読める環境を作ることは、単に読解力向上だけでなく、本のなかで色々な世界を楽しんでもらいたいという思いもあるからです。

(平林、久我)


2015-08-15 南アフリカ

コンテナ図書室で成人教育


現地視察訪問をしていて一番嬉しい瞬間は、「プロジェクトが彼らのものになった」または「彼らのものになりつつある」という手応えを感じた時です。 今回の8月初旬から一週間の視察訪問でも、そんな嬉しい場面に何度も出会いました。

その一つが、ムナフ小学校。 この小学校はグレードR(プレスクール)から小3までのジュニア・プライマリですが、校舎が小さくて図書室を作るスペースのない学校でした。 しかたがないので、教室に本棚を置いて図書コーナーを作っていましたが、管理が難しく、またその教室以外の生徒は本を借りることができないので、コンテナ図書室を長年待望していました。 しかし、TAAAとしても資金不足のなか、コンテナ図書室の寄贈先として高校を優先していたので、ムナフ小学校には長い間待ってもらうしかなかったのです。

大変ありがたいことに、今年度は「ひろしま・祈りの石国際教育交流財団」から助成金をいただくことになり、6月にようやくムナフ小学校にコンテナ図書室を寄贈することができました。 

そんなムナフ小学校を今回訪ねてみるとプロジェクトマネージャーも知らなかった嬉しい驚きがありました。なんと、放課後、このコンテナ図書室を地元住民のための成人教室としても活用しているとういうではありませんか。

成人教育の参加住民は、今までの人生で一度も学校に行ったことがない人から、高校卒業の試験に合格できなかった元高校生まで含めて96人だそうです。 彼らをレベル別に分けて、先生たちは毎日放課後ボランティアで教えているとのこと。

TAAAの長年の学校図書支援プロジェクトの延長上として、将来、地元住民にも開かれたコミュニティ図書支援活動ができるといいね、とよくプロジェクトマネージャーとは話していましたが、このように学校の方から積極的に地元住民にオープンな図書室活用をしてくれて、とても嬉しく、頼もしく思いました。 TAAAからのささやかなプレゼントを自分たちのアイデアで何倍にも価値の高いものにしていく。学校とTAAAとの協力関係はどんどん進展しています。

(久我)


2015-07-22 南アフリカ

7月12日講演会のレポート


7月12日(日)9:30~11:30、市ヶ谷のJICA地球ひろばにて、TAAA 講演会が開催されました。最初に浅見会長から挨拶があり、第1部はTAAA南アフリ カ事務所代表の平林薫による報告、第2部は東京農業大学の稲泉教授による講演、という構成でした。

浅見会長からは、今、現地では自立の芽が出てきており、我々にとっては歴史的転換点という話 がありました。10数年前に南アを視察した際は、寄贈した移動図書館車が草原に置かれたままとなっており、愕然としたとのこと。やはり物をあげるだけでは不十分であり、ソフトの部分が重要です。ここにきて、運営委員をやっていた生徒が卒業してTAAAのスタッフに加わるようになり、まさに真の意味での支援につながってきました。

平林さんからは、南アの状況、菜園プロジェクト、図書プロジェクトに関する報告があ りました。南アは現在、2人に1人は失業している状況であり、電気の普及率は49%、 水道の普及率は5.1%と相変わらず厳しい状況です。アパルトヘイトはなくなりまし たが、ずっと負のスパイラルが続いています。そ のような中、学校は地域の中心であり、TAAAは学校にアプローチをかけて活動を続けています。

菜園プロジェクトでは委員会が活動の中心となっており、上級生が下級生に教えるようになってきています。また、先生が一生懸命になると、それが生徒へも伝わっていくようです。ジュニアの生徒たちはお母さんと一緒に活動していますが、高校生になってからいきなりスタートしても続かないことがわかってきました。早い段階から始めることが良さそうです。通常の活動に加え、リチャード氏の農場見学や、ピーターマリッツバーグの農業展示会見学なども織り交ぜており、これらは子どもたちにとって良い経験となっています。

図書プロジェクトでは、移動図書館車の運行に加え、今回は助成金をもらえたことからコンテナ図書室も設置しました。英語の本はもちろん、教材自体が少ないので、算数セットもとても喜ばれています。子どもたちだけでなく、実は先生も図書室を使った経験がないことも多いため、まずは先生に図書室の利用方法・マネジメント手法を学んでもらう必要がありいます。なお、残念なことに図書室が荒らされてしまうこともありますが、司書の常駐など対策を打ちつつ、活動を継続しています。



次に稲泉先生からは、学術的な視点で、南アの農業、TAAAの菜園プロジェクトを分 析していただきました。南アの農業を各種統計、対GD P比率の観点でみると、それほど大きなインパクトはありませんが、地域・個人の視点に立つと、より積極的な意義があると指摘されました。それは、農業の雇用吸収力が期待されており、個人の社会的自立の契機ともなるためです。

TAAAの菜園プロジェクトについては、実施者、運営方法、利用方法、授業科目との 連動、食育活動などの項目で整理し、客観的な解説を加えていただきました。特に印象的だったのは次のエピソードです。稲泉先生が子どもたちに好きな野菜と嫌いな野菜を質問したところ、好きな野菜はニンジン・ホウレンソウ、嫌いな野菜はキャベツ、との回答がかえってきました。なぜか。キャベツは虫食いが多く、手入れが大変 なためです。 これこそまさに、TAAAの菜園プロジェクトが現地に根付いている証拠である、と指摘されました。

最後には、ルソーの「エミール」から推察される農業の教育力や、日本との連携の可能性などにも言及され、本講演会は幕を閉じました。次回の講演会は今年12月、さいたま市で予定しております。ぜひふるってご参加ください。

(丸岡)


2015-06-12 南アフリカ
 
卒業生がTAAAスタッフになりました

 4月から支援対象校の卒業生の一人が、TAAA現地アルバイト・スタッフになり、張り切って活動をしています。 ルトゥーリ高校出身のモンドリ・チリザ君です。 モンドリ君は昨年度まで、図書委員として学校の図書活動を引っ張ってきました。

 ルトゥーリ高校は、TAAAが2012年にコンテナ図書室を寄贈した学校ですが、それまで図書室がなかったとは考えられないくらい、図書の貸し出しが多く、図書活動が活発に行われている学校です。 図書室を立派に機能させたのは、図書委員会生徒たちでした。

 図書室運営をできるだけ図書委員会生徒たちに任せているという、司書教師のマカンヤ先生は、「図書委員会活動は、彼らの運営能力が磨かれるだけでなく、自主性が育つ」といって喜んで、いつも彼らを見守っていました。 生徒達は自分たちで貸し出しルールを考案し、貸し出しカードも手作りしました。私が2013年に視察訪問した際は「僕たちの図書室は日々改善しています」との頼もしい言葉を聞きました。

 とにかく本が大好きで、休み時間や放課後はいつも図書室にいたモンドリ君。 今は、自身の図書委員会活動での経験を生かして、対象校40校の図書委員会生徒たちを指導してくれています。 今年度は、各校の図書委員会生徒たちへのエンパワーを目指しているので、モンドリ君には大いに期待したいです。

ルトゥーリ高校の図書委員会活動については、2013年9月25日付け活動日誌 「生徒が自主運営する学校図書活動」をご参照ください。

(久我)


2015-5-23 日本

2015年5月17日 作業の報告

 爽やかな風が吹く気持ちのいい日曜日。

 今日の作業には、千葉県の冨里小学校より、生徒さん5名、ご父兄3名、先生1名 合計9名の皆さんがご参加くださいました。

 冨里小学校の皆さんは、以前に算数セットを集めて、TAAAに送ってくださり、今日は作業のお手伝いにと、遠路来て下さったのです。

 今日は、TAAAスタッフも9名(鯨井さん・野田さん・浅見さん・丸岡さん・大友さん・高野さん・梶村さん・横山晃祐さん・西村)参加。
 小学生の参加を楽しみにしていた鯨井さんは、皆さんに見て頂こうと、お手製の資料を用意して、一番乗りで作業場に到着しました♪

 そこへ、元気いっぱいの小学生が加わり、かつてないほどの混雑ぶりでした。
 しかし!人数が増えても、小学生なので、平均年齢は上がらず・・若さあふれる作業場でしたね、皆さん、ありがとう♪

 鯨井さんの資料を配って、簡潔&にこやかに丸岡副代表が手順を説明して、さぁ、いよいよパッキングの開始!
 みんなと同じ小学生用の本から始めてもらいました。最初はみんな、こわごわだったけれど、すぐに慣れた様子で楽しそうでした。男の子は、重い箱も、がんばって持ち上げて、腕が痛くなっちゃったね。箱の側面に、平林さん宛のコメントを書いてくれましたので、平林さん、楽しみにしていてください♪

 算数セットのパッキングも、工夫してやってくださいましたね。皆さんが集めて下さった算数セットが出てきて、感動の再会♪自分が使った算数セットを、丁寧に箱につめて、それが海を渡って、遠い南アフリカに届くと思うと、本当に嬉しいね♪

 南アでは、算数セットを授業に使ったり、生徒達が自由に数遊びができるように図書室に置いたりして、活用されています。
 最近では、算数セットを送って下さる方が増えていて、「算数セットの寄贈先をネットで探していたら、TAAAのHPにたどり着いた」と算数セットを通してTAAAを知る方々が増えているようです。

 私が小学校に入学する時も、算数セットはありました。(45年位前のお話ですが・・汗)
 きれいな色で、いろいろな形のこまかいパーツが入っていて、母がその一つ一つに名前を書いてくれて、これを使って勉強するのかな~と思うと、とても大切な気持ちになって、何回も何回も箱を開けて、中身がちゃんと入っているか確認したのを思い出します。私が使った算数セットは、たぶん捨ててしまったかな。そんな大切なものだったから、他の誰かに使ってもらえたらどんなによかったか・・と今になって思います。

 南アの子供たちも、皆さんから届いた算数セットに目を輝かせ、子供らしい色々な工夫をして、楽しく使ってくれているそうです♪

 今日は、冨里小のみなさんのがんばりのお蔭で、NO.172から始めて、なんと56箱完成!!こんなにたくさん出来上がるのは、普段では考えられません。
 仕分け作業(本の内容で、学年別・専門別に分ける作業)も、すぐに追いついてしまって、大友さんが頑張ってやって下さいましたが、足りなくなってしまったそうです。

 冨里小のみなさん、横山さん、今日はお疲れ様でした!!横山さんもたくさんの箱を完成させてくださいましたね。
 これからも時々、TAAAのHPを見てくださいね。今日作った箱が、いつ日本を出発して、いつ南アに届くのか、それから、学校へ届くまでの道のりを楽しみにしていてくださいね。そして、今日体験したことを、学校の授業で発表したりできるといいですね。

 日本のいろいろな地域から、英語の本や、算数セットやサッカーボールを送ってくださいます。私たちも、その箱を開けるとき、そこの皆さんがどんな風に使っていたのかな?などと想像して、いつもワクワクした気持ちです。

 冨里小学校の皆さん、遠いから、作業にはいらっしゃれないと思いますが、千葉県からTAAAを応援してくださいね♪
 今日は、ありがとうございました!お疲れ様でした~♪

(西村裕子)


2015-05-12 南アフリカ

2014年度の活動をふり返って


 皆さまからの暖かいご支援のお陰で、2014年度も「学校図書支援プロジェクト」、「学校・コミュニティ菜園プロジェクト」、「サッカープロジェクト」の3つのプロジェクトを滞りなく行うことができました。 ありがとうございました。

 対象地域での活動が2年経過した2014年度を一言で総括すると「普及から定着」といえます。 2013年度に始めた3つのプロジェクトは、課外活動として各学校で定着し、多くの学校では、授業にも活用されました。
 各学校は、それぞれの環境に合わせて独自の方法で各活動に取り組むようになってきてています。

 この普及から定着へとプロジェクトを根付かせた主導者は、なんといっても生徒たちでした。 菜園プロジェクトでは「菜園委員会」、図書プロジェクトでは「図書委員会」と、各対象校で委員会を設置したところ、委員会生徒たちには、活動だけでなく、少しづつ管理や運営にも積極的に参加するようになりました。 彼らの能力を引き出してくれたのは、TAAAの若い地元スタッフたちです。生徒たちにとって、すっかり兄貴的存在となったスタッフは、委員会生徒たちに、のびのびと自主的に活動に参加させながら、指導を行ってきました。 それが奏功したのでしょう。知識や技術だけでなくリーダーシップも育ってきて、菜園委員会の生徒たちは、他の生徒や保護者に菜園技術を教えて始めたり、図書委員会生徒たちは、自主的にミーティングを開くまでになりました。

 こういう委員会活動が、今後、先輩から後輩へと引き継がれ、各校で継続していくには、まだ運営基盤やスキルなどエンパワーが必要です。それは今年度の課題になります。  ただ、「生徒が主役」をモットーに活動してきた私たちにとっては、このような芽がでてきたことをとても嬉しく思い、大切に育んでいきたいと思っています。
 引き続き、ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(久我祐子)


2015-04-18 南アフリカ

クワズールー・ナタール州環境省よりサポート賞を受賞

 クワズールー・ナタール州環境省主催のSEEPという「学校環境教育プログラム(SCHOOL ENVIRONMENTAL EDUCATION PROGRAM)」がありましたが、そのプログラムにTAAAの対象校であるバンギビーゾ小学校が参加しました。 バンギビーゾ小は、有機菜園活動を活発に行うだけでなく、図書プロジェクトにおいても、段ボール箱に小麦粉を塗って固めた箱を本棚にするなど、リサイクル活動も積極的に行っている学校です。

 3月31日には受賞式があり、バンギビーゾ小学校とTAAAが招待されました。
受賞式には、ウグ郡全土からプログラムに参加して表彰される学校の他に、州農業省、州水道省、州地域開発省、ウムズンベ自治体代表など州内の各省庁と自治体が出席しました。

 プログラムではいくつかのカテゴリーでの表彰が行われましたが、バンギビーゾ小学校は、優秀賞受賞という快挙をなしとげ、さらに有り難いことには、TAAAはサポート賞で1位を受賞しました。
 個人では、TAAA南ア事務所代表兼プロジェクトマネージャーの平林薫が受賞し、団体ではTAAAが受賞しました。
 事前になにも知らされていなかったので、スタッフ達は驚き、大喜び。TAAAスタッフは全員地元の青年なので、州政府からの地元での受賞は、大きなモチベーションに繋がったようです。

 いつも環境保全を念頭に置き、それぞれの学校の地域環境に合わせて、教師、生徒、保護者たちと智恵をしぼり、試行錯誤をしながら活動している私達にとって、今回の州環境省からの受賞は、大きな励ましになりました。

(平林、 久我)


2015-4-4 南アフリカ

ズアール村でまだ活躍中の移動図書館車「いずみ号」

 この3月末に、ケープタウンから遙か離れたジョージタウンに近い山中の村で地元の教員を中心に活動してきたズアール移動図書館プロジェクトから、何年かぶりでうれしい報告が届きました。TAAAが、所沢市から寄贈された「いずみ号」をズアールに送ったのは1997年のことでした。もう17年も経つのに、あの「いずみ号」がまだ活躍しているとは、うれしい驚きです。今年で識字維持向上活動の15年目を祝ったというズアール移動図書館プロジェクトからの報告を要約して数々の写真と共に紹介いたします。

 ズアールでのプロジェクトは相変わらず、奥地の学校や集落に識字用図書・教材を届けています。この何年間で私たちのプロジェクトもこの地域の識字向上に効果を上げることが叶い、対象校の一つであるTowerkop 小学校が、最もめざましい識字向上を達成したとして賞金を授与されました。
 プロジェクト運営委員会は毎年開催されるWorcesterでの移動図書館会議に出席すると同時に、ゾアール移動図書館関係者会議を年4回開催し、情報や体験を分かち合っています。
 「いずみ号」と呼ばれるいすず自動車バスは、何年にも亘ってすばらしい働きをしてくれたのですが、今は冷却機能とオイルポンプの調子が悪く長距離運行からは退役しております。
しかし短距離用にはそのパワーはまだ捨てたものではなく、3つの小学校と3つの子ども会に走ってくれています。(末尾にその具体的な情報を一覧表にしておきます)
 この間、西ケープ州教育省から新しいバスを一台支給され、そちらが長距離運行を担当しています。目的地には舗装されていない凸凹道をかなりの時間をかけてたどり着くといった状況ではありますが。
 プロジェクト運営委員会は、この15年間、一人のメンバー交代を除いては、設立当初の 面々で続けています。貴会が私たちの活動にお寄せ下さる関心に感謝し、いつまでも心にとめて活動し続けたいと思っています。


 いずみ号運航先一覧

小学校/子ども会名教員数学習者数
Zoar E.K. Primary15360
R.P. Botha Primary7250
Amalienstein Primary11333
Alabama Playgroup478
Buzy Bees680
Toddlers335

(訳 大友)


2015-2-26 日本

3団体で要請書を送付いたしました

TAAAは、「特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)」と「任意非営利団体ニバルレキレ」と共に、産経新聞(2月11日付)の曽野綾子氏のコラム『透明な歳月の光 労働力不足と移民 「適度な距離」保ち受け入れを』が、アパルトヘイト政策を推奨しているように読めることから、当該コラムの撤回を求める要請書を作成し、2月25日付で曽野綾子氏および産経新聞に対して送付しました。
是非お読みくださいませ。

産経新聞(2月11日)コラムの撤回を求める要請書


2015-2-11 日本

1月12日(月・祝)TAAA講演会 (5)
2部 講演 平林 薫 <質疑・応答>

Q1. (荒らされた図書館の写真について)何のために図書館を荒らすのか?
A1. 何があるのか分からずに入ったが、本はいらないのでただ荒らして帰ったのだろうと思われる。今は図書館は使えず、本は校長室に保管してもらっている。
Q2. (成績優勝者の表彰について)優秀生徒をしっかり把握するシステムがあるのか?
A2. ある。科目ごとに上位生徒が把握されており、トータルの結果を卒業式に発表している。学校との関係ができてくるにつれて、昨年から卒業式に何度か招かれるようになり、大変光栄。
Q3. 本の選別・寄付はどのように?
A3.

各校がほしいとしている本をその予算内で注文するのだが、予算が足りずに購入できない場合に注文がくる。図書室用の本を学校で買うのは厳しいので、英語の本はTAAAから寄付している。
Q4. 男子生徒に対してロールモデルがないということだが、職業を紹介するような教材はないのか?
A4.

アパルトヘイト時代はしっかり農業が教材に入っていたが、今は「農業科学」の科目の中で大規模農業のことしか書かれていない。実地がほとんどない。多様な仕事について学ぶ機会があるのかは分からないが、あまりないのではないか。
Q5. 学校に図書館の設置を義務づける法律がないと聞いているが、法的取り組みが必要で、そうでないと今後も学校図書館は増えない。教員自身による教材開発や、授業の材料を調べるための教員の支援も必要。教員同士のネットワークができれば良いと思う。障害児支援も必要だと思う。
A5.

先生方は時間になったらすぐに帰ってしまい、もうちょっと頑張ってほしいという気もする。教師達自身も取り組み方が分からないのではないか。休みも絶対に学校に出てこない。
Q6. 2050年という区切りで考えたとき、南アはこれから35年後どうなっていると思うか?自分が初めて南アに行ったのが35年前だが、今と比べてどの程度変わったと言えるか。。。
A6.

ポテンシャルを持っている人は多い。自分達のやりたいことができる状態ができたらいい。間違った方向に進んでしまったら大変だが、正しい方向に向かっていけば凄く大きな力になる。

 <久我 祐子 TAAA代表 より>

TAAAは菜園活動も図書活動も委員会をまず作った。子ども達は委員会として、主体性をもって、創意工夫をして、自分達でいろいろ考えて、「これは自分達のプロジェクト」という認識を持っている。そうした子ども達が教員・大人になった時、いろいろやってくれるのではないだろうか。本当に小さいことだが、そうした生徒達が育っていくと、彼らが地域のロールモデルとなり、30年後変わってくるのではないか。


Q7. 学校菜園から家庭菜園に繋がっているというが、ビジネス化していくことはないのか?
A7. 家庭菜園は今はまだ家庭や地域内だけで、一般販売まではいっていない。学校菜園で採れたものは、先生が買うなどして学校の資金になっている。食材として給食に使ったりもしている。
Q8. ポートエリザベスに住んでいた10年前、近所の人に「作物を盗まれてしまうので家庭菜園はやらない」と言われたことがあった。農業というとらえ方ではなく、家庭菜園をしている家庭は結構あるのか?
A8. 何らかの工夫をして何かをするという取り組みが見られない。家庭菜園というものを知らない、見たことも聞いたこともないという人が多い。プロジェクトをきっかけにいろいろと知られてきているので、少しの情報と少しのアドバイスで凄く良くなっていくと思う。
Q9. リチャードさんが自分の農場で子ども達を雇うということはできないのか?リチャードさんの人脈を活かすことはできないのか?
A9.

リチャードの農場は小さく、スタッフは2人くらい。彼の専門は家畜なので、菜園活動とは少し違う。マーケティングや他の仕事もあって、彼の仕事は子ども達に直接は参考にならないこともあって、難しい。

(記録:米山)


2015-2-7 日本

1月12日(月・祝)TAAA講演会 (4)
2部 講演 平林 薫
(TAAA南ア事務所代表)

1. 南アの社会・学校・菜園

  • 活動地域のクワズール・ナタール州ウグ郡は、サトウキビ畑が広がる自然豊かな地域で、現在40校を対象に学校菜園の支援活動を行っている。家庭菜園も奨励している。
  • 学校菜園で採れたものを自分達で調理して食べたり、苗を家へ持ち帰って、家庭菜園を始めたりする家もある。
  • 将来農業をやりたいという子どもも出てきている。
  • 生まれた時にはアパルトヘイトは終わっていた子ども達だが、多くの若者は夢や目標を持てずに生活している。アパルトヘイトは終わったのに何も変わっていないという状況がある。
  • アパルトヘイトが終わった時に生まれた子どもは20歳になるが、社会全体が変わるにはまだまだ時間がかかる。確かに変わってきた部分はあり、先進国のように力をつけてきた部分もある。しかし大多数の人々にとっては変わっていないか、またはより悪くなっている。リーダー達は既に多くを持っていても、「もっとほしい」という風潮がある。
  • タウンシップの人達はアパルトヘイト時代に自尊心を徹底的に破壊されており、ロールモデルがないので、何をしたらいいのか分からない。職業として農業を行うというのも考えられない。
  • 社会保障はしっかりしている。老齢年金に親戚までが頼っていたりするが、社会保障に対する依存も生まれている。母親が養育支援金を街で貰ってそれっきりということも。年金の強奪や詐欺といった社会犯罪も起こっている。
  • グループ作りから始めて、わずかな収入を得るCWP(Community Working Program)というものがある。メンバーは圧倒的に女性で、次のステップに繋がるものなのだが、グループ同士で足の引っ張り合いもある。ノウハウ、資金繰り等、企業がもう少し支援してほしい。才能がある人は多いのだが、何かを始めるきっかけがないので、それを発揮する機会がないのである。
  • 現在、南アは電力不足の状態にある。計画停電があり、1日1回2時間程度の停電だったが、現在は1日2回になってきている。今年はもっと多くなるのではないかと懸念している。ウルドーのメンバーに「電気がなくて大変だ」と話すと、「元々電気はないので、生活は何も変わっていない」と言う。学校には電気があるので、携帯の充電やサッカーの試合観戦のために勝手に入ってきて、騒いで、何かあれば持っていってしまうということも起こっている。「待っても待っても自分達は忘れさられている」、「支援がここで離れてしまうのではないか」という気持ちが人々の間に広がってきている。
  • 圧倒的に女子生徒の方が活発で、優秀だ。卒業式で表彰される最優秀生徒は圧倒的に女子が多い。男子は力を発揮しきっていない。「一生懸命はかっこ悪い」という考え方があり、男子は特に地域や家庭にロールモデルがないので、男子をみていると「サポートしないと」と思うが、地元の若い男性スタッフが男子生徒にいい影響を与えている。身近な警察官やソーシャルワーカー志望が多く、そうした夢や目標をはっきり言える生徒は良いのだが、そうでない生徒のサポートが必要だと感じている。
  • 教師には保護者やソーシャルワーカーの役割も求められている。中には労働組合間の争い、政党間の争いを学校にもってくる教師も多い。生徒達は教師をよく見ていて、学校内でそうした対立があると学校も荒れてくる。自分は部外者だからこそ、ちょっとしたことがあると頼ってくるということもある。
  • 親が老齢等のため学校に出て来られず、保護者会が成立しない学校もある。
  • ファシリテーターのリチャード・ヘイグは、農場を持っている白人男性ということで、一見イメージは悪いが、リチャードが来ると一気に先生方はのめり込まれる。とにかく情熱(Passion)が凄い。生徒達は何かに携わる機会、何かを体験する機会が少ないので、農園活動は良い学習の機会、体験学習になっている。

2. 図書支援

  • レベル別にある程度分けて送られてくるものをさらにグレード別に分け、学校に寄付している。
  • 学校側は古い教科書は全部リサイクルに出し、読める本に入れ替える。
  • 何もなかった教室が、ボランティア貯金の活動で本棚が贈られ、TAAAからは本が贈られて図書室に変わっている。
  • いつ行ってもコンテナ図書館にいる男の子がいる。
  • 小学校で本に触れ、中学校に上がっても本を読む習慣づけを司書がやってくれている。
  • 男子生徒には冒険ものや漫画(Cartoon系)が人気で、人のとった本をすぐに読もうとする傾向がある。
  • 女子生徒の方が男子生徒よりもしっかりと本を読んでおり、読み始めたら止まらない。
  • 図書委員会が始動して良くなっていった矢先に、図書室に何者かが侵入し、荒らしていったという事件があった。

3. サッカー支援

  • W杯後だが、道具や設備はまだまだ不十分なので、サッカーボールの寄贈は非常に喜ばれる。
  • お兄ちゃん達が遊んでいると、女の子が果敢に入っていくような場面も。
  • 女子生徒はサッカーボールを使ってネットボールをして遊ぶこともある。
  • TAAA会員の森さんが作ったサッカー・マニュアルが非常に好評だ。
  • 図書館バスのバッテリーを盗まれた時に、調査に来た警察官がサッカーボールの寄付活動を行っていると聞き、寄付したこともある。
  • 卒業式で最優秀生徒には本や賞状を渡すのだが、スポーツの最優秀生徒にはサッカーボールを贈った。その生徒がずっと片時も離さずボールを抱えていたのが印象的だった。

(記録:米山)


2015-2-5 日本

1月12日(月・祝)TAAA講演会 (3)
1部 講演 サンディーレ・ムカディ <質疑・応答>

Q1. 6つの性格分析について、もう少し聞きたい。
A1. 1つの分析方法ではあるが、路上で見せる顔と、家で見せる顔とでは違う子どもも多い。子どもの性格を単純に6つに分類して、「この子どもはこのカテゴリー」と1つにくくることはできない。その子どもがどういう子どもなのかを理解するのは本当に難しい。
Q2. どのような職業訓練があり、それを受けるための条件とは何か?
A2. 家に戻った子ども達が対象。月曜日から金曜日までで、休日は必ず家に帰る。保護者にも分かってもらうことが大切。内容には識字教育、溶接、音楽等がある。
Q3. この活動を始めるきっかけは?
A3.

オーストラリアの取り組みを知り、大きな影響を受けた。自分はサーファーでジャッジでもあったので、路上でただぶらぶらしている子ども達にサーフィンを教えられると思った。何かで忙しくさせておけば、悪さをする時間もない。
Q4. 活動資金はどうしているのか?
A4.

どの団体も活動資金の確保は大きな課題だろう。プログラムごとに予算がつくのだが、今はオランダからの支援があるだけ。5年間の資金援助を受けたら、必ずウムトンボを離れてもらうことにしている。自分達が稼いでいると思われたくないし、「向上していない」とも思われたくないので。資金確保にはいつも悩まされる。
Q5. ストリート・チルドレンはなぜ発生するのか?
A5.

まず親に職がないことが多く、それに子ども達が耐えられない。子ども達も家庭の状況が厳しいことは分かっているので、親に食べ物を求めない。他にも親が事故に遭ったり、HIVで亡くなったりして孤児になることもあるが、近隣や親戚の人々の世話にはなりたがらない。年金や社会保障を受けている家の子どももいるが、結局路上に出た方が、何にも縛られずに自由を感じる子どもも多い。路上で物乞いをして、親がそれに支えられているケースもある。女の子は売春も多い。数年路上生活が続くと、なかなか普通の生活に戻れなくなってしまう現実もある。
Q6. ウムトンボから学校に戻らせることはできないのか?
A6.

学校訪問は行う。一旦子どもが家に戻ったら、私達は校長先生と話して、翌年度から学校に受け入れてもらえるように働きかける。年度途中で入ることは難しいので。制服がないので学校に通えないということもある。またタウンシップの学校を訪問して、子ども達に路上に出ないように働きかける「アウェアネス・レイジング(Awareness Raising)」 のプログラムもある。

(記録:米山)


2015-1-31 日本

1月12日(月・祝)TAAA講演会 (2)
1部 講演 サンディーレ・ムカディ
(南アNGO「ウムトンボ」スタッフ・2014年南ア・スポーツ賞ボランティア部門金賞受賞)

  • ストリート・チルドレンからはたくさんのことを学んでいる。彼らは主に14歳から20歳までの若者だが、彼らがなぜ路上にいるのか、皆それぞれ異なる理由がある。
  • これまでおよそ100人の子ども達のケアを行い、60人を家庭に戻すことができた。
  • 体操、サーフィン、ウォーキング等を通して子ども達の生活のリズムを整え、家庭訪問等も行ったのが成功の要因だと思っている。
  • まずは何より子ども達の振る舞いや行動について理解することが大切。
  • 子ども達の振る舞いや行動を引き起こす性格の分析は、心理学の手法を使って行っている。子ども達を次の6つの性格に分類し、どのカテゴリーに属するのかを把握してから、個々の子どもにアプローチしている。
    1. ハーモナイザー(Harmonizer):常に相手に対してのリスペクトを持ち、平和を貴ぶ。
    2. パシスター(Persister):自分の信念に固執し、とにかくそれを主張する。
    3. シンカー(Thinker):全てを時間通りに、考えながらしっかりと行う。
    4. イマジナー(Imaginer):あらゆる想像を巡らせながら、ゆっくりと事を進める。
    5. レベル(Rebel):常に強気で反抗的。
    6. プロモーター(Promoter):自分に自信があり、自分を見てほしいとする自己顕示欲が強い。
  • 元々ウムトンボにはサーフィンのコーチとして入ったのだが、今はソーシャルワーカーとして子ども達のケアを行っている。
  • 家に戻った子ども達で印象に残っているのは、家庭環境が複雑だったステロノモ君、11歳から路上生活を続けていて18歳で家に戻ったブツーマ君、洋服や食料を持たせて帰したスマンガ君等がいるが、路上生活が長いと家庭生活ができなくなってしまい、結局路上に戻ってきてしまう子どもも多い。一方で、モンデッテレ君はストリート・チルドレンのためのワールドカップ大会に出場して、自信をつけて家に戻り、現在も頑張っている。
  • ウムトンボには、「ポスト16(Post 16)」という16歳以上にライフスキルを教えるプログラムもある。街から離れて技術習得に専念できるもの。
  • なぜ子ども達が路上で生活してしまうのかを知ってもらうための、親を対象としたペアレント・ミーティングも行う。
  • 長い休暇中に子ども達が問題を起こすことが多いので、この時期にイベント等の開催も行う。
  • ドラッグに関わる子どもが多いので、とにかく、朝に散歩をしたり、体操をしたり、スポーツやレクリエーションをしたりすることで、何かに関わらせ、ライフスタイルを確立させることが大切。
  • 昨年はピースボートで南アに来ていた若者らが活動を協力してくれた。

<平林 薫 TAAA南ア事務所代表 より>

2014年南ア・スポーツ賞の表彰式がサントンのコンベンション・センターで行われた。表彰では30秒のスピーチがあるのだが、サンディーレは「隣の人に『愛している』と言って下さい(Say I love you to people next to you)」と語り、大盛況だった。


(記録:米山)


2015-1-31 日本

1月12日(月・祝)TAAA講演会 (1)
南アフリカ民主化20年を迎えた子どもたちの今
~なぜ生きづらいのか・どこへ向かっているのか~

 浦和のコミュ二ティー・センターで行われた今年の報告会は、2014年南ア・スポーツ賞ボランティア部門で金賞を受賞したサンディーレ・ムカディさんと、TAAA南ア事務所代表の平林薫の二人を講師として行われました。
 ムカディさんからは、ストリート・チルドレンの実態やその支援活動についてご報告をいただきましたが、報告半ば、来場者全員にバナナを配り、皆で「バナナの歌」(?)を歌いながら食べていくというアイスブレイクを入れるなど、終始非常に和やかな雰囲気で行われました。
 平林さんは、南アの現在の状況、TAAAの菜園・図書・サッカー支援等の活動を、子ども達や学校の写真スライドを使いながら紹介しました。
 参加者から多くの質問や意見も出て、あっという間の大変有意義な3時間となりました。ご講演の内容につきましては、数回に分けてご報告させていただきます。

(米山)


2014-12-27 日本

2014年最後の定例作業

 12月21日(日)は、2014年最後の12月定例作業を行いました。
 参加者は、久我さん、浅見さん、丸岡さん、大友さん、西村さん、梶村さん、髙野さん、鯨井、そして、初参加の明治大学商学部3年生寺澤康太郎さん、山口雅樹さんの10名でした。
 久我さんと大友さんが英語の本の種別分け(南アフリカ現地代表の平林薫さんが、現場で作業し易いように、予め、日本で英語の本を難解度別 - 小学生低学年から専門書レベル - に梱包します)を事前に行っていたおかげで、梱包作業はスムーズに進みました。
 支援物資が梱包された段ボール箱にナンバリングをしていくのですが、95までいきました。今年の9月に2014年分(2013年9月~2014年8月)の英語の本を南アフリカへ送った際の段ボール箱は400個だったので、今回の梱包で1年分のおおよそ1/4分が終了したことになります。

 午後は毎年恒例の忘年会を、ミーティングルームで行いました。
 参加者は、久我さん、野田さん、浅見さん、丸岡さん、大友さん、西村さん、髙野さん、寺澤さん、山口さん、鯨井でした。
 忘年会では、鍋をつつきながら懇親を深めるのですが、鯨井が、自宅の畑で採れた大量の野菜を持参したおかげで、野菜不足の現代人に嬉しい、低カロリーかつ繊維質が豊富な鍋となりました。
 お腹一杯食べたところで、お開きとなり、今年のTAAAの行事は、全て終了となりました。
 一年間ご支援戴いた皆さま、本当に有難う御座いました。
 なお、2015年最初のイベントは、1月12日(月・祝) に浦和コミュニティセンター 第15集会室で行う「TAAA活動報告会」です。お時間のある方、是非、お気軽にお越しください。



(鯨井)


2014-11-27 南アフリカ

命を支える学校菜園

 対象地域は、「給食は一日の主な食事」という貧窮家庭の生徒が多く、給食は子供たちの成長を支える主な栄養源となっています。 育ち盛りの子供たちには決して十分な量ではありませんが、給食は命綱といえるほど大切なものです。しかし大変困ったことに、ここ最近、教育省からの入金が滞っているため、給食業者は食材を調達できないという事態に陥っています。

 このような緊急事態において、学校での菜園活動による畑の収穫は、乏しくなった給食を支えるため、大活躍をしています。 また、余剰の収穫物は、子供だけで生活している孤児家庭へ配給されることで、彼らへの命のサポートになっています。

 教育省は予算不足や様々な問題を抱えているのでしょうが、早く、給食業者への入金滞りの問題が解決し、今まで通りの学校給食が復活することを願うばかりです。 

(TAAA南ア事務所 編集:久我)


2014-10-14 南アフリカ

山間部で広がる菜園活動


 菜園プロジェクトは、多くの学校で順調に進んでいます。
 山間部にあるトゥルベケ小学校では、全校生徒が畑作りに携わっています。 州農業省のサテライトオフィサーが同校を訪問した後、“全校生徒が関わって立派な畑を作っている。 有機であそこまでできるとは驚きだ。私もいろいろと学べた”と農業指導員に話したそうです。

 トゥルベケ小のドラドラ校長は、若いころ“ファーマーになるか、教師になるか”の選択に迷ったほど畑作りに情熱を持っており、また山間部で町から遠いという地域の環境も考え、生徒に農業の技術をつけさせることはとても大切でと考えています。

 隣のシボングジュケ高校もトゥルベケ小と連動する形で活動が活発になってきており、家庭菜園を始めた生徒も多くみられるようになりました。 女子生徒の家庭訪問をした際に母親が、“何を始めるのかと思ったら真剣に畑作りをしていて驚いた。私も教えてもらっている”と話していました。校内の卒業生グループの活動も収穫の販売などを通して地域に認識され始めており、着実に学校から地域へ菜園活動が広がっています。

(TAAA南ア事務所 平林薫  編集:久我)


2014-08-21 南アフリカ

もうすぐ出荷。今年は段ボール400箱です

 一年間分の梱包作業が終わりました。 今年は、段ボールが400箱になりました。 総重量は5,805㎏です。 12,092冊の英語の本、153個の算数セット、460個のサッカーボールが、9月初旬に出港する船で南アフリカに送られます。

 ダーバン港に到着し陸揚げされる荷物は、通関を経て、ウグ郡のTAAA南ア事務所まで陸送されます。
プロジェクトマネージャーと現地スタッフは、事務所に届いた大量の本を、丁寧にレベル分けとニーズ分けをして各対象校に届けていきます。

 ご寄附いただいた皆さま、梱包作業に参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。 新しい本やサッカーボールを手にする現地の子供たちの歓声が聞こえてくるようです。 

9月からは、さっそく来年送る荷物の梱包作業に取りかかります。
これからもご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

(久我)


2014-08-06 日本

外務大臣表彰を受賞いたしました

 8月4日(月) 午前中に外務省飯倉別館(港区麻布台)で平成26年外務大臣賞表彰式が行なわれ、「特定非営利活動法人アジア・アフリカと共に歩む会」も表彰を受けました。
 久我さんと野田が出席し、外務大臣から直接、表彰状を受け取りました。

 個人で表彰される数10人が終わり、団体では、アイウエオ順でTAAAが最初に呼ばれました。 久我さんが前に進んで賞状を受け取り、無事に戻って席に座ったので、ほっとしました(笑)。

 今後とも、微力ではありますが、現地の声を第一に息の長い支援を継続していきたいと思っています。
 これからも、ご支援・ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

(事務局長 野田千香子)


2014-07-26 日本

南アフリカの生徒・コミュニティーへの支援~JICA草の根技術協力事業を中心に(7月13日の平林 薫氏講演より)

はじめに
 (画像のオープニングページの写真について説明)6月1日開催の「コムレッツ・マラソン」(ピーターマリッツブルグ→ダーバン80km)に参加したTAAA現地スタフの一人であるカムレラさん(図書館プロジェクト担当)が1万6千人中76位でゴールインした時の、応援者たちと喜び合う写真だ。優勝者もクワズール・ナタール州の若者だった。このようなイヴェントに地元の若者が参加できるようになって来ているのは喜ばしいことだと思う。


1. 草の根技術協力事業
  1) 指導者(各対象校の菜園プロジェクト担当教員)研修
    (1) 対象校40校(4グループ)のうちの2グループずつを対象に、ファシリテーターを有機農法指導者リチャード・へイグさんにお願いし、プロジェクト参加校の菜園を回り持ち研修開場として、技術啓発と学校間の交流・連携作りをめざして行われている。また、ヘイグさんが経営するエナレニ農場での研修会も開催。リチャードさんは、ファーミングの一体性(伝統的な羊や牛を飼い、伝統的な植物を育てる)を追求し、食物の生産・加工・流通に意識をもつことの重要性も説く。肥満気味の参加者を前に、肥満人口の多さについても容赦なく問題視する。常に新しいノウ・ハウも試行しており、その成果をすべて指導教員たちにも教示してくれる。ソーラーで水をくみ上げることも最近学んだことの一つだ。インスパイヤーされた教員たちは、この研修の様子を携帯にとって、各自の学校に持ち帰って生徒たちにもみせているようだ。収穫物を使った料理もする。男性職員の積極的な参加を呼びかけている。この農場研修は、卒業生グループや生徒にも、20人位ずつの単位で行われている。ここで繋がったグループ間で苗のやりとりも行われている。
  2) 学校での菜園活動
    (1) 各学校には、委員会設置・活動の記録を要請しているが、それ以外の運営方法は、各校に任せている。全くの希望者だけがあつまっているところもあれば、農業科学という科目選択者全員を自動的に委員会メンバーとしているところもある。どちらの場合もうまくいくかどうかは、指導教員次第という要素が大きいようだ。担当教員の機転で、孤児たちをメンバーにし、自分たちの食糧確保を実践させているところもある。
    (2) 退職者の年金取得までのつなぎ・若者雇用対策としてCWP(地方自治体主催のコミュニティー労働プログラム)メンバーが学校の敷地内で農業省の支援により菜園活動を始めたことが、当初は有機農法による生徒の活動としての菜園プロジェクトとどう調整するかでやや混乱もあったが、現在は相互に学びあい、協力し合う関係が築かれつつある。地域のCWP担当者が学校を訪問し、有機農法にも理解を示してくれている。農業省から化学肥料や殺虫剤をもらっていたCWPの中で有機農法に転換するところも出てきている。
    (3) 地域的には、土壌・気候ともに食物栽培に適しており、特にトマトやピーマン、豆類がよく収穫できる。殺虫剤にはチリとガーリックを主成分としたオーガニックのものを使っている。肥料の牛糞と水の運搬は、TAAAのスタッフが運転する車で応援している。
    (4) 小学校でじっくり取り組めた生徒がそのまま地域の中学・高校へ進んで活動を支えている。特にシニアプライマリー(5年生~7年生)の生徒が一番活動に適しているようだ。ズールー生活文化の伝統的な傾向(男性は畑仕事に従事しない)がある中で、男子が熱心にやっているのをみると、学校での取組みの重要性を痛感する。菜園活動が活発になると、図書館活動への好ましい影響も見られる。
ある学校では7年生が、技術習得と同時にスープキッチンのような形でランチ提供をめざしたいと言っている。
  3) 若者グループの活動
    (1) 4つの学校を拠点に若者グループを結成。それぞれのグループが、環境や状況に合った方法で活動を行っている。メンバーへの研修会開催、グループ間での交流や学び合いを行う。苗や収穫を地域住民や学校に販売している。
2. 図書館プロジェクト
  1) 移動図書館車は今エンジンの修理に入っている。
  2) 移動図書館への本の返却の際に生徒に読んだ本のストーリーを話させる。
  3) 昨年度コンテナー図書室を寄贈した高校2校の図書活動が始まった。
  4) ポケモンやドラえもんは、特に男子生徒に大人気。
  5) テクノロジーという科目があるのに、教材・教具があまりに不十分。
  6) 活動が活発な学校が、リーディング・コンペで優勝した。
  7) 学校によっては、図書館車から本を借りた生徒にビニール袋を渡して本を保管させている。
  8) 昨年度対象校でなかった学校で図書室の本の整理・分類を手伝った。
  9) 昨年から配布対象に入れた専門学校に約60箱を寄贈。図書室の書棚にはまだ本がほとんど入っていない。
  10) 司書教師に本を配布して読書を奨励
3. サッカープロジェクト
  1) サッカーボールは、対象40校に、今2巡目の配布を行っている。
  2) マニュアルを活用して練習を行っている学校は地域でダントツに強くなってきている。

最後に
 学校の状況は一校一校異なっており、どのプロジェクトを通してみても、「そこの校長や教師、生徒、入ったNGOの関係が作る学校」という印象を持つ。いまだに設備や資材が不足している中で、プロジェクトの活動が生徒たちに何かに関わる機会となって欲しいと願っている。

<質疑・応答>

Q. 菜園プロジェクトは将来ファーマーになりたいというこどもたちを育てられそうか。
A. 菜園プロジェクトは、好き・嫌いが分かれる。小・中・高と繋がっているので、いずれそういう子どもが出てくることが期待できる。2~3年で結果がでるとはおもえないが。
Q. 農業省の支援は有機ではないとのことだが、理解・協力してもらえるのか。
A. 遠隔地・小規模農業には有機が適しているということはわかってもらえている。

(記録:大友)


2014-07-19 日本

アパルトヘイト後の20年を振り返る(7月13日の牧野久美子氏講演より)

はじめに
 TAAA設立二年後の1994年は、全人種参加総選挙によってアフリカ民族会議、国民党、インカタ自由党の「国民統合政府」が樹立されるというアパルトヘイト廃絶のシンボリックな年だった。そこから20年経ったが、アパルトヘイトからの脱却・変革はまだ途上にある。
 1994年以来5年ごとの選挙を経て、今年2014年はアパルトヘイト後に生まれた「ボーン・フリー」世代が始めて投票。この間ANC政権は長期に続いているが、アフリカでは珍しくリーダーは、マンデラ、ムベキ(退陣後の暫定大統領としてモトランテ)、ズマと交代してきた。
 80年代に、政治、経済、スポーツ、文化の全分野において世界から孤立していた南アは、90年代にはムベキ提唱のアフリカン・ルネッサンスが推し進められ、まずは近隣アフリカ諸国へ進出、そして国際社会へと復帰・グローバル経済へ統合され、2000年代には、新興国としての地位を確立し、BRICSの中では決して上位を占めてはいないが、南部アフリカのリーダー的地位は確保している。

南アフリカの民主化とはなにか。
 それは政治的だけでなく、経済・社会的なプロセスでもある。
 南アが民主化した1980年代後半~1990年代前半は、他のアフリカ諸国も次々と民主化を経験し、「民主化の雪崩」とも呼ばれた。しかし、「一党独裁から選挙による多党間競争への変革」を意味する他のアフリカ諸国の民主化と比べたとき、南アの場合は意味が違う。複数政党制の選挙は行われていたが多数派のアフリカ人が参加できていなかった南アの場合、政治的民主化とは、多数派意見を反映した政府の実現を意味し、また一人ひとりの人権の保障も民主化の重要な要素であった。この人権保障とはアパルトヘイト時代に否定されてきた多数派の人々の基本的人権の保障を意図するとともに、マイノリティーとなる白人の権利を守る面もあった。

1) 政治的民主化
  (1) 地域的には多少の暴力も見られるが、クーデターで乗っ取ろうというような企ては起きず、概ね自由で公正な選挙で政権交代を実施してきた。新憲法、特にその人権憲章はすばらしいだけでなく実効をあげている。セクション9は、あらゆる人間の平等を謳い、セクション27の2項は健康福祉、食糧、水や社会保障を実現する責務を国が負っており、これを国がさぼれば憲法違反と、違憲裁判所で裁かれることを規定している。
  (2) ANC政権の長期化による問題
政権政党ANCの一党優位状況には問題があるとされるが、少数政党に有利な比例代表制のもとでの公平・公正な選挙での得票であり、少なくとも消極的には支持されている。問題なのは、
①有権者へのアカウンタビィリティ確保の課題
②政府と与党の区別が曖昧、政治資金規制、公務員の副業規制の不在   だと言えるだろう。
2) 経済的民主化
  (1) 1994年のANCの選挙公約、RDP(復興開発計画)には、政治的民主化は、人々の生活向上の実感なしには実現しえないと書かれていた。政治的民主化と経済的民主化は切り離せない、経済的民主化なくして政治的民主化はありえない。経済的民主化には人種格差の是正と、絶対的貧困の解消の両方を含む。
  (2) 人種格差の是正について。BEE(黒人の経済力強化政策)によって株主・経営者の黒人比率を高め、その後、より広い範囲の人々が受益するような「広範な」BEE政策が導入され、「ブラックダイヤモンド」と呼ばれる黒人中間層はいまでは400万人に達するとも言われる。
  (3) しかし、土地改革は進んでおらず、白人による土地所有率87%(1999年)のうちの7.5%しか、非白人への移動が実現していない。この変更の遅れへの不満は募っている。
①シャープビルの虐殺やソウェット蜂起を彷彿とさせるマリカナ鉱山事件
②底辺労働者にアピールするのが上手なマレマ率いる「経済的自由戦士」が今年の選挙で予想以上の25議席を取った。ANCは新自由主義のDAに右から、マレマたちには左から突き上げられている。
  (4) 南アは、世界で最も不平等な国の一つであり、人種間格差に加えて人種間格差も近年では拡大している。絶対的貧困は社会手当の拡大により減少している。貧困世帯の収入にしめる社会手当の比率はきわめて高い。しかし社会手当は貧困問題の根本的解決ではなく、雇用拡大が必要。
  (5) 雇用増のためには教育が果たす役割が大きい。就学率は1994年の70%台から、90%台にまで上がった。しかし高校修了試験までに半数がドロップアウトしている。教育の質が問われるわけだが、それは教員の力量の問題に加え、中央政府が理想的な教育目標だけ掲げて、方法論等は現場任せになっているため現場が混乱し対応しきれないという構造的な問題もある。貧困地域の補助金を多くして教育予算を傾斜配分するなどのアパルトヘイト下の教育格差の是正策は実施されているものの、分権化が、「校長や学校評議会や入り込んでいるNGO等の動き次第」という格差を生み、学習権の平等化を達成できないでいるという事情もあるようだ。

最後にまとめとして
 「アパルトヘイト廃絶後の南アの歩みにも日本が学ぶべきところがたくさんある」という久我代表の挨拶にもあったように、南ア社会はあらゆる差別に敏感で、あからさまな人種差別、障害者差別、男女差別、マイノリティー差別は許容されなくなっているという意味では、政治的な民主化は、ほぼ達成されたと言える。しかし「経済的脅威としての外国人」の排斥は深刻な問題だ。
 経済的な民主化の遅れは、政治的民主化そのもののプロセスにおける白人政権や経済界との妥協(急速かつ根本的には変えないという合意)の必然的帰結だと言わざるを得ない。問われているのは頻発する労働者・住民のプロテストが求める「変革の加速化」と「経済成長による雇用創出」のバランスをどうとるかということなのだが、どちらにも財源が必要なため、簡単にはいかない。

<質疑・応答>

Q. 貧困の根本的解決策としては雇用の創出を考えているようだが、現実的で可能性があると思えるのは、「雇用の再分配」か「成長のパイ拡大による雇用増やし」か。
A. 派遣労働は全面廃止しろという労働者側の要求と規制緩和(労働条件の悪化)されないと雇用は増やせないという経営者の言い分が鬩ぎ合って、雇用を如何に増やすかについては対立がある。雇用の再配分は労働者側には受け入れられないので、結局、実際にやっているのは社会的に有益な事業(Ex.介護の提供、水を吸い取ってしまう木を抜くという除木作業)を公共事業として組織して、失業者を雇用するということが中心である。
Q. 土地改革が進まないのは?農業振興のための土地接収などは進められないのか?
A. 政府による土地改革の対象にできるのは、これまでの所有者が手放したいと意志表示したものだけ。所有者の同意を得なくても接収できる道を開こうという議論がなされているが、見通しは不透明。初期の土地改革は、土地を手にした黒人の農業振興の視点を欠いていたが、ここ10年ぐらいは、農業振興に力が注がれている。権利を移転してあとは勝手にやって、というのではなく、土地のオーナーだった白人と黒人農場労働者の共同出資でうまくいっているワイン農場などのケースもある。
Q. 不動産として土地を購入できるお金を蓄えた非白人が出てきているので、民間売買で所有が移っている分もあるはずで、所有が動いている元白人所有地のパーセンテージはもっと高いのでは?また今まで借りていた白人の土地の所有権を取得したというケースの処理は?
A.

たしかに。しかしそういった様々な移転実態を示す数値は今手元になく示すことはできない。

(記録:大友)


2014-07-19 日本

TAAA帰国報告会 南アに根付く、学校・地域への農業・教育・スポーツ支援
~南アフリカ民主化20周年~ 7月13日(日)午後3時~6時JICA地球ひろばにて

 鯨井さん作成の資料と平林さん南アからおもたせのハッカ飴を受け取って受付をすませた27人の参加を得て、司会丸岡さんの開会宣言、久我さんの代表挨拶のあと、牧野さんの講演「アパルトヘイト後の20年を振り返る」、鯨井さんによる図書支援プロジェクトの国内作業の様子紹介、休憩を挟んで平林さんの報告「南アフリカの生徒・コミュニティーへの支援~JICA草の根技術協力事業を中心に」が行われ、充実した報告会となりました。
 上記に、2回にわたって、牧野さんの講演と平林さんの報告の要約(質疑応答も含む)を掲載します。
(大友)



2014-05-29 南アフリカ

生存のための学校菜園活動

 3月にプロジェクト視察のため南アフリカ共和国の対象地域を訪れて、数校を訪問しました。 TAAAの3本柱である、図書プロジェクト、有機菜園プロジェクト、サッカープロジェクトが、各対象校で定着しつつあるとの感触をもちました。

高校になると、教師も生徒も多忙になり、有機菜園プロジェクトの進捗状況にはばらつきがみられましたが、生徒たちが必死になって有機菜園技術を学ぼうとする姿もみられました。

カンヤ高校は、昨年8月から菜園プロジェクトを始めた学校ですが、訪問すると数人の男子が畑仕事にいそしんでいました。 菜園担当教師に聞くと、この地域は保護者のいない孤児家庭が多く、菜園委員会メンバーの生徒たちは、全員孤児だといっていました。

 南アフリカの遠隔地域に住む子どもたちは、僅かな年金を頼りに生きている祖母に育てられている場合が多いのですが、祖母が年をとり亡くなった場合、引き取ってくれる親戚がいないと、“Child-headed family”になります。孤児家庭では、高校生ともなると、一家の大黒柱です。 ほとんどお金のかからない有機菜園技術は、彼らにとって生存するための一つの大きな支えとなるでしょう。 「彼らは孤児だから、菜園委員会に入ったのだと思います。 学校で習った技術をいかして、家の周りにも菜園を作って作物を育てていますよ。」と女性の担当教師は淡々と説明してくれました。 
産業のないこの地域では、学校を卒業しても地元で賃金収入をえることも、都会に出て職をえることも非常に難しく、ましてや大学や専門学校など進学できる生徒はごく一握りです。

他のアフリカ諸国のように、農村がなく、貧しくとも自給自足ができる伝統的な自活手段が十分に育まれてこなかった南アの遠隔地域では、住民たちは、祖母の僅かな年金に頼って生きているという歪んだ不自然な状況が続いています。祖母が亡くなることは、大家族の収入が途絶えることを意味します。

休み時間が終わり、畑で一汗かいた生徒たちは、私に軽く会釈して教室に戻りました。彼らの屈託のない笑顔からは、孤児がかかえる日々の苛酷さはすぐには感じ取れません。 コミュニティーや学校のしっかりとした支えを得ているのでしょうか。 この地域の生徒たちの厳しい状況と、彼らの明るい表情のギャップは、苛酷な状況を知れば知るほど謎で、いつも驚かされてしまいます。 村の中心街にも、子どもの物乞いやストリートチルドレンはいません。 目には見えないものですが、彼らのような孤児がコミュニティーで生きていけるような、しっかりとした伝統的な福祉システムが育まれてきたのでしょう。 そういうところに、南アの人々の叡智を感じます。 そうはいっても、貧困地域での孤児の生活は苛酷です。生き延びるために、有機菜園技術を学び、実践していってほしいと思います。

(久我)


2014-05-05 南アフリカ

支援校の読書に対するアプローチと今後の活動の取り組み

 今回は、支援校の読書に対するアプローチと今後の活動の取り組みについて書きたいと思います。
 南アフリカの小学校では、高学年に入ると教科書も英語表記になっていきます。そのため英語に触れてもらうことが大切です。そこで、学校では様々な取り組みを行い読書の推進をしています。ある学校では、おススメ本の紹介ポスターを作成しています。他の学校では、朝礼時に読書感想文の発表をおこなっています。読書することにより英語を読む能力を養い、発表することにより英語を話す能力を養い、発表を聞くことにより聞く能力を養い、紹介ポスターを書くことにより書く能力を養っています。この読む・話す・聞く・書く能力を学べる取り組みを同時に行うのは、非常に有効だと感じました。しかし、この取り組みを同時にやっている学校は少ないのが現状です。

 今後の図書支援の取り組みに感じたことは、平林さんの負担をどのように減らせるかと思います。40校の図書支援を平林さんと現地スタッフ計2名行っています。それ以外にも、菜園もサッカーの活動にも時間を注いでいます。
 その中で、平林さんが時間を一番注いでいたのが本の仕分けです。どの本をどこの学校に持っていくか、古くなった本や傷ついた本の廃棄です。前者は、平林さんやスタッフしかわからない問題ですが、後者は日本国内で箱詰めするときに処分できることです。しかも、平林さんの話を聞く限りかなりの数の本があるということです。この作業がなくなるだけで、平林さんの負担が減ります。
 実際に日本で出来る活動は少ないですが、その中でクオリティーを高める必要性があります。今後も図書活動は続くと思いますので、改善する余地はたくさんあるのかと思いました。
 すべては、南アフリカの子供たちの読書水準を上げるために。

(森直之)


2014-05-02 南アフリカ

サッカー支援をするための課題と取り組み

 今回は、サッカー支援をするための課題と取り組みについて書きます。
 私は、今回が南アフリカへの3回目の訪問でした。その中で共通の課題は、サッカールールの認知向上です。私は、現在サッカー指導者として働いています。その中で、園児から小学校6年生まで指導しています。今回の南アフリカサッカー教室では、中学生を指導しました。しかし、その光景ははっきり言って日本の園児レベルです。例えば、片足を上げたり片手でスローインしたりなどです。その他にも、同じように日本の園児がよくやるような行動をしていることが多数ありました。サッカー好きな生徒が、このような事を行うということはサッカーに触れる時間と指導者不足が影響しているのではないのかと思います。

 去年から、TAAAとTHAN球プロジェクトが行っているバファナバニャニャプロジェクト(サッカープロジェクト)では、サッカーマニュアルを作っています。南アフリカの子供たちにサッカーを身近に関わっていってもらうためにです。
 今回の南アフリカ視察訪問に持って行ったのは第2弾です。1弾と2弾は、サッカースキルの向上について書いています。そして、第3弾はルール向上について書きたいと思っています。サッカールールが向上することによって、フェアプレーにも繋がり、そしてサッカーの楽しさがより一層増します。
 また、サッカーマニュアルは現地語のズール語ではなく英語で書かれているため英語の勉強にも一役買っています。

 そして、一つのサッカーマニュアルを作るためにたくさんの人に手伝っていただきました。本当に感謝です!ありがとうございます!今後も、南アフリカの子供たちにサッカーの楽しさを伝えられればなと思います。

(森直之)


2014-04-26 南アフリカ

図書プロジェクトから見えてきたこといくつか

 図書室でどんな本が読みたいかと、聞いた際に上がってきたのは、英語の小説、歴史物、キング牧師の伝記、詩集、演説集など、色濃く「文化系」でした。理数系の勉強を奪ったアパルトヘイト時代の「バンツー教育」の遺産でもあると推測されますが、理数系の古典を初心者用に書き直したものなど、質のいい理数系入門書があればいいなあと思いました。
 どこでも人気があるのは英文小説のようでしたし、学力のある学習者は、できるだけたくさん英語を読んで英語力をのばしたいと思っていることも理解できました。現にザミサ学区長とのミーティングの際に、彼女から「すべてのプロジェクト対象校で、英語の教師を図書担当に任命して欲しい」 との要望があり、「対象地域の英語力の底上げが緊急課題で、TAAAの図書プロジェクトをその目的 に利用したい」という意向が読みとれたそうです。司書教諭配置制度が未だ導入されていない全ての対象校の中でやや手狭ながらもモデルとなるようなすばらしい取り組みのあった小学校の図書担当教員は、校長の計らいで、教科の持ち時間などを減らして図書活動に力を入れられるようになっているということだったので、英語の教員を当てるかどうかは、ザミサ学区長と対象校で話しあってもらうことになるのでしょう。英語の過度な強調が民族母語軽視にならないことを願いたいと思います。

 モデルになりそうな上記のBangibizo 小学校の図書室は、小さめな教室の半分ぐらいを使って、壁3面を本箱で埋めて中央に4脚の椅子付テーブルをワンセットおいてあり、椅子に座れない読者や本を探す学習者のために本箱の前にはゴザが敷いてありました。壁に掛けられた日本のカレンダーの「かちかち山」のお話を英語にしてといわれ、私のあやしげな即興英訳でも聞き入ってくれました。日本、日本語に対する興味関心の高さを実感できたのも、この図書室でのことでした。

(大友)


2014-04-17 南アフリカ

小中学校間での図書室シェアを提案

 支援先訪問の一日目は、南ア事務所からは一番遠い山間部にある学校をいくつか訪問しました。

図書支援を始めて2年経つKwa Bombo小学校では、学習者の図書委員会(各学年から1人で構成)が結成されており、授業中だったためメンバーには直接会うことはできませんでしたが、図書担当教員ともども本の分類、啓発ポスターの掲示などに取り組んでいることがうかがえ、図書室としては一応の定着を見ていると判断できました。

一方その地続きに立つ支援一年目のInqolobane中等学校では、ちょうど図書担当教員と図書委員会を構成する学習者たちと話す貴重な機会を持つことができました。図書委員会として広報活動をしたいが、何かアドヴァイスがあるかと聞かれたので、「新着図書」の宣伝を定期的に図書室のドアに貼りだすのはどうかなと言うと、朝礼では、新着図書の紹介や読んだ本の紹介・感想文を発表する時間をもらっていると言うではありませんか。
ここも、となりの小学校同様、自立の一歩を踏み出していることを実感しました。図書委員会の学習者達は、学校の中でも英語が得意で学習意欲旺盛な子ども達たちだと思いますが、「とにかく英語の読み物がもっともっとたくさんあればいいと思う。でもクラスメートの中には、少し難しすぎると言って借りていない子もいる」と言うので、「となりのKwa Bombo小には、もっと読みやすいものがかなり揃っているので、委員会としてあちらの図書室にも訪問して、まずは見てきたら?」というと、「え?小学校には私たちの学校に図書室ができる前から図書室があったの?」と何処か別の小学校からこの中等学校に入学して来た様子で、「じゃあ、図書担当の先生にも相談してみる」とのことでした。
小学校内でも中等学校内でも、同じ学年でもかなりの学力・英語力の開きがあるようだし、敷地も地続きなので、それぞれが相手校でも借り出せるような乗り入れを、図書委員会のイニシャティブで行えたら理想的だと思いました。「もっと本が欲しい」という要望に対しては、「教育省に図書委員会名で、『図書室にもっと本が欲しい』というお手紙を書いてみるのも一案よ」と言っておきました。

(大友)


2014-04-12 南アフリカ

中学生とサッカー教室

 世界で一番人気のあるスポーツであるサッカーは、南アフリカでも大人気です。
しかし、サッカー環境は日本のように整っていないのが現状です。例えば、支援している地域には電気が通っていなくテレビも観られない地域があります。また自国でワールドカップが行われたことも知らない生徒がいるほどです。生徒にとって、サッカーの情報はボールを前に蹴るという情報しかないのです。これは、日本でいうと幼稚園レベルです。また、サッカーを行う環境も酷い状況です。僕はサッカーを初めて20年になりますが、はっきりいって、初めて見る光景ばかりです。例えば、グランドの状況です。写真からでは分かりづらいですが、凸凹していているグランドの中には小石や枝が多くあります。ここの地域の少年は裸足なので、怪我をするリスクが上がります。実際に、女子の練習中に一人の女子が怪我をしてしまい、抜けることになり残念でした。
 今回の視察では、中学校2校計70名以上の生徒とサッカー教室を行いました。
おこなった練習は、サッカーの基本であるインサイド・アウトサイドを使ったドリブル・パス・シュートの練習です。しかし、生徒にとってどれも初めておこなう練習ばかりです。生徒は、全員目を輝きさせながら一生懸命行っていました。
 最後の練習は、紅白戦です。試合中も様々な光景を見ました。例えば、スローインの時に足を上げたり、ゴールキックをパントキック(手から球を落とし、地面に着く前に蹴るキックのこと)で始めたりです。まだまだ、課題は多くあると実感しました。
次回は、その課題について書こうと思っています。

(森直之)


2014-04-09 南アフリカ

図書室の現状

 今回の視察では、小学校・中学校・高校を含む計10校の図書室を訪問しました。

 この2枚の写真は、現在の支援校の図書室の現状である。まず気になる点は、本棚に入っている冊数である。種類の少なさもあるが、特に冊数の少なさである。日本から毎年1万5000冊を送っているがこれが現状である。左の写真は、中学校の図書室である。この図書室には2つの本棚がしかなく分類もされていない、本の置き方もバラバラであり雑である。また、本の種類にも偏りがあり、小説の本はたくさんあったが、歴史学や自然科学などの専門書が少なかった。本生徒の声にも、「本の量を増やしてほしい」「歴史学や専門書が欲しい」など様々なリクエストがあった。
 次に気になる点は、室内のレイアウトである。右の写真は、高校の図書室である。見てわかる通り、広い室内には椅子が5脚しかないのである。椅子に座れなかった生徒は、立って本を読んでいる者もいた。日本の図書室には、机がありそこには椅子が並んでいるのが普通である。たしかに、予算の問題があるのはわかるが淋しいのが現状である。

 訪問した各学校には、しっかり司書の先生がいて図書室のレイアウトが一任されている。図書室を見れば、その先生のやる気有るか無いかがみられる。やる気の有る先生は、冊数が少なくてもポスタや椅子の配置などが工夫をしていて、図書室に行きやすい環境つくりを行っている。また、やる気が有ってもどのように図書室を工夫したらいいのかがわからない先生も多くいた。その原因は、先生が子供の時に図書室という存在に触れたことがないのが原因である。そのようなやる気がある先生を指導する支援も大切なのかと思う。
 まだまだ、図書室の発展する余地はたくさんあり日本から支援する必要がある、しかし僕が4年前初めて行った時と比べて一歩一歩ずつ前進している光景が見られた。

(森直之)


2014-04-08 南アフリカ

手作り感ある南アの学校図書室

南アでの分類・分配作業を経た図書はカムレラさん運転の車で、各学校に運ばれ、平林さん、カムレラさん、図書担当教員、図書委員の学習者たちによって、本箱に分類(かなりの学校はデューイ十進分類法を導入済み)されていきました。このプロジェクト開始前から「図書室」的な場所があったところは、そこが教育省から配布されてくる教科書倉庫と化していたため、その入れ替え作業にも時間がかかっているようでした。
現在の図書室は、元倉庫、元第2職員室、元理科室、元教室、そしてTAAAから支援したコンテナなどでした。訪問した時間が授業中・試験中でなかった場合は、学習者で賑わう図書室では、といってもいかにも手狭なところもありましたが、本を読んだり、勉強をしたりする学習者の姿に出会い、1990年代の南アの学校からは、あきらかな変化を確認できました。

本が収まる本棚は、このプロジェクトが始まるまでは図書棚としては使われていなかったらしいものから、横板を上下移動できるスチール性のものまでありましたが、地元の家具職人バーナードさんの手作りによる、明るい茶色の木製の2段図書箱の風合いがなんとも温かく、素敵な図書と利用者を待っているようでした。別な日にバーナードさんを、かれの仕事場(使われなくなった教会)に訪ねて、この方ならではの作品だと納得がいきました。バーナードさんの本箱に惹かれて、彼のところへ弟子入りして技術を身につけたいと思う子どもがでてくるかもしれないと思ってみたりしました。

 訪問校での校長、図書担当教員、そして学習者たちとの交流の様子や平林さんの良き理解者で惜しみない応援者である学区長のザミサさんの図書教育に託す思いなどについては、追って報告したいと思います

(大友)


2014-04-05 南アフリカ

TAAA南ア事務所での本の分類作業

ヒバディーンに仕事の性質から破格の家賃で借りている事務所の一部屋には年に一度日本から届く段ボール箱が積み上がっており、真ん中の作業・会議場として使われる部屋には、箱から出されて対象32校を意識しての種分けが施された本の山が、いくつもできていました。新しい箱が開かれるたびに、どの学校にふさわしい本かが考慮されながら既にできている山に加えられていくのを見て、この山もそういう作業の積み重ねなのだという
ことを実感しました。

作業は時々ダーバン在住の日本人が手伝って下さるとのことでしたが、基本的には、図書館プロジェクトスタフのカムレラさんと平林さんの仕事です。 「この本は、~小学校に持って行きたい」「これは~高校の先生が喜んでくれるはず」と声を弾ませ、「これはちょっとくたびれている上に書き込みもあるし、こちらのワークブックは本体のテキストが欠けているので外しますね」と囁く平林さんに、頭が下がると同時に、私たちが日本の作業場で
やっている分類は、この南アでの作業のささやか
なお手伝いにすぎない、送る本の吟味ももう少し
入念にしたいと痛感しました。 (続く)

(大友深雪)


2014-04-03 日本

「ニコニコ子ども会」の皆さんが梱包に訪れてくれました

3月31日(月)春休みの真っ最中、穏やかな午後、TAAAに隣駅の「ニコニコ子ども会」(森さんがサッカーの指導をされてきたグループ) の小学生5人、中学生2人、お母さん3人、計10人が「こんにちは、お世話になります」と言って現れました。
本や箱が積まれた異様な大きな部屋を息を呑んで見ていました。

森直之さん(子どもたちから「イケメン」と呼ばれている)が「さあ、ここにまるく輪になって座ってね。
イケメンは南アフリカに行ってきました」と言って、パソコンを開いて南アの地図、気候、学校菜園、図書室、サッカーの様子などを画像をみてもらいながら、15分お話されました。「イケメンたちはこういう学校に本やボールを送っているんだよ。

これからみんなで、箱に入れる作業をしてみよう!」「イケメンはボールの梱包の仕方を教えるから、半分の人は野田さんから本の梱包の仕方を聞いてね」と要領よく、グループ分けして、すぐ作業にかかりました。子どもたちの顔には“そういうことなら、まかせておいて!”と書かれているようでした。
低学年の妹さんはお母さんと一緒に、他の子どもは自力で箱を組み立て、レベル別の本を数えて、詰めていきます。

「一杯になりました」というところで、外箱にJUNIOR SECONDARY小36冊と書いて、封をして、量りまで押して行って、「15kg」。 出来上がり。「えら~い、できたね」次はボール組と交代。ボールに乗って空気抜きを頑張っている人もいます。

ワールドカップの時、有名になった南アの細長いラッパ状の楽器ブブゼラを順に吹いてもらいました。イケメンよりも誰よりも上手に素晴らしい音を出した3年生くらいの男の子、見事でした。
イケメンからチョコレートをもらって終了。
すぐに一人のお母さんから、お礼状と写真をいただきました。皆にとっても私たちにとっても楽しい日でした。

(野田千香子)


2014-04-02 南アフリカ

視察訪問に行きました

3月22日から28日の約一週間、日本メンバー4人がプロジェクト視察訪問のため現地を訪問いたしました。

TAAAは、学校を拠点とした有機菜園プロジェクト、学校図書支援プロジェクト、サッカープロジェクトを3本柱として、クワズールーナタール州ウグ郡トゥートン・ムタルメ・ウムズンベ3学区の学校と周辺のコミュニティ支援活動を行っています。
今回の訪問では、これらのプロジェクトの視察、話し合い、そして交流のために、10校の小学校(フル・プライマリ, ジュニア・プライマリ、 シニア・プライマリ)、6校の高校、3つの有機菜園ユース・グループを訪問しました。

訪問を開始する前の日に、有機菜園と図書支援活動に係わっている3人の若い視察訪問に行きました現地スタッフとミーティングをして、現地の様子、問題点、要望を確認しました。
これから少しずつ、視察訪問で見た学校やコミュニティーの様子をご紹介させていただきます。 お楽しみに。

写真は休み時間の生徒たちの様子です。 元気いっぱいに遊んでいました。

(久我)


2014-02-20 南アフリカ

畑で男女が一緒に汗を流す

現行の学校有機菜園プロジェクトは、「人育て」に重点をおいています。 農村のある地域であれば、子どもは、家族やコミュニティーを手伝いながら自然と農業を学んでいきますが、大農園に土地を取られ、農村が未発達な南アの遠隔地域の場合、学校が唯一菜園活動を学ぶ効果的な場所になっています。

南アフリカでは、過去の政策や文化的背景など様々な理由で、男性が農業に従事してこなかったことが、村の地域住民による農業が未発達な要因の一つになっています。 「畑仕事は、家にいる女の仕事で、男の仕事ではない」という偏見も未だに根強く残っています。 そのような対象地域で、男子生徒が、毎日、学校菜園活動に積極的に参加して、畑で女子生徒と一緒に協力して汗を流している姿は、地域住民の農業と男女観の意識を大きく変えていっています。

対象地域では、毎日、学校の畑から楽しそうな男女の笑い声が聞こえます。 地域住民の意識改革をもたらす笑い声です。

(久我)


2014-02-10 南アフリカ

定着して広がる図書活動

司書教師や図書委員メンバーの生徒と共に本を整理、分類して学校図書室の整備を行っています。 本は、南アフリカで購入して配布した英語の本とズール語の本、そして日本から送られてきた英語の本です。

図書室整備の時間は、指導員が、司書教師が研修会で学んだことを活用しているかを確認する時間でもあり、必要に応じて積極的にアドバイスを行います。

前期(2013年9月~12月)は対象校7校で図書室が開設されました。 コンテナー図書室を寄贈した高校2校を含め、今年度にできた学校図書室は、蔵書の整理、分類が進み、図書室として機能し活用されています。

前年度にコンテナー図書室を寄贈したシニア・プライマリー(5-7年生)では、図書活動は自立した運営体制になってきて、卒業を控えた7年生の図書委員が蔵書の確認や6年生に仕事の引き継ぎを行っている姿が見られます。

生徒と先生の自主的で継続的な働きによって、対象地域で図書活動が定着し広がってきていることを実感するこの頃です。

(TAAA南ア事務所代表平林薫、 久我編集)


2014-01-26 日本

TAAA活動報告会レポート

 TAAAは年に2回程度、支援者の皆さまに活動実績を報告する会を催していますが、1月11日(土)午後2時より、さいたま市内与野本町コミュニティセンターに於いて、2014年最初の報告会を実施いたしました。

 報告に先立ち、講師のTAAA南アフリカ事務所代表の平林薫さんから、昨年(2013年)12月5日に逝去された、反アパルトヘイト運動の指導者で元大統領ネルソン・マンデラ氏について、言及がありました。氏の死去後、年齢や人種を問わず大変多くの国民が、哀悼の意を表し、改めて氏の偉大さを実感したと述べていました。
 平林さんがとても印象に残ったこととして、Madiba moment(Madibaはマンデラ氏の愛称)を挙げていました。マンデラ氏に会った人や、遠くから見かけただけでも感じる、“とても偉大な人に逢って幸せだな”“身内でもないのにとても親しみを感じる”といった感情を指す表現だそうです。マンデラ氏の追悼式が行われたFNBスタジアムで、オバマ米大統領とラウル・カストロ キューバ国家評議会議長が握手を交わしたシーンは、政治観の違いを超え、自由と民主主義のために生涯を捧げたマンデラ氏を追悼しようとして、世界が一つになったMadiba momentを象徴する最も印象的な出来事だった、と述べていました。

 TAAAの報告会では毎回テーマを決めて講演しますが、今回は『南アフリカへの教育・農業・スポーツ支援~目指せ、ズールー人“男子力UP”~』と言うタイトルで、ズールー人にフォーカスした講演となりました。

 Zuluとは“天”という意味があり、ズールー人は“天国の人々”という意味です。
 ズールー人は、今から2,000年ほど前、東アフリカから南下してきたそうで、19世紀初頭、シャカ王がズールーを統一し、強大な王国を作り上げました。
 ズールー人は、装飾品としてビーズを重宝し、儀式の時などは、ビーズをふんだんに使った綺麗な衣装をまとったそうです。現在、TAAAの支援地域である、クワズールー・ナタール州ではシャンベ教会という新興宗教が勢力を拡大しているとのことです。

 ズールー人男性の特徴として、マイペースな性格を挙げられ、ズールー社会は男性優位である、と述べました。また、がむしゃらに何かをするのは格好悪いとされ、彼らが最も大切にしていることは、年長者や先祖に対するリスペクトの精神である、と指摘しました。

 次に、南アフリカの現状について報告がありました。
 非常に大きな経済的格差、高い失業率、社会保障への依存が大きい、などの点を指摘しました。これらの要因が、厳しい生活への不満や将来への不安へとなり、犯罪の増加など社会の不安定化へと繋がると。

 クワズールー・ナタール州に住むズールー人の7歳から17歳の23.9%が両親と同居していない、23.9%は親と同居していない、多くの場合、おばあさんと同居です。つまりおばあさんの年金に頼っているということになり、親は出稼ぎで生活費を入れる場合もあるけれど、そのまま町で自分たちの暮らしをしてしまう人たちも多く、遠隔地のおばあさんに預けられた子供たちの環境が厳しくなってきています。
 学校でもこのような子供たちが多くなってきていることが問題となっています。

 ズールー人の慣習として、家事・育児・畑仕事は女性の仕事、という考え方が根強く、もっと、ズールー人男性にも発奮してもらいたいという、平林さんの思いから、副題に、【目指せ、ズールー人“男子力UP”】と付けました。

 続いて、TAAAの具体的な活動報告に入りました。
 初めに、JICA草の根技術協力事業『学校を拠点とした有機農業のモデル地域作り』についての報告がありました。
 現在、対象地域を4つのグループに分け、40校を支援しています。
 小学生の活動では、畑仕事をしたことのない児童が殆どなので、菜園に慣れさせることを目標に支援を行っています。高校生は、農業を将来の就労先にしてもらいたいという願いも込め対象校を増やしました。また、生徒のモチベーションを高めるため、TAAAの農業支援ファシリテーターでもあり、自然農業専門家のリチャード・ヘイグ氏の農場“エナレニ”にも訪問し、直接指導もしてもらいました。
 また、この事業では、対象小学校4校をベースに卒業生グループも作り支援を行っています。卒業生グループは男性中心の“ムタルメグループ”と女性が中心の“トゥルベケグループ”に分けられます。
 ムタルメグループのメンバーには、畑仕事は女性の仕事という意識を変えてもらうため参加してもらっています。トゥルベケグループは、畑仕事に慣れている、女性がメンバーの多数を占めているため、実績もムタルメをリードしており、収穫も多いとのことです。

 次に、国際ボランティア貯金の助成による『基礎教育支援のための学校図書室の配備と巡回指導』事業について報告がありました。この事業の目的は、“本へのアクセスを容易にする”“本を通し、基礎学力・読解力を向上する”ことの二つです。
 図書委員会を設立し、生徒自ら図書の管理や貸し出しを行ったり、教師を対象にした研修会も開催しているなど、寄贈された本の、有効活用が着実に行われている旨報告がありました。本以外にも、本棚などの図書室用備品の寄贈も行われたとのことです。
 また、彩の国国際交流基金からの助成で、図書室用コンテナー二つの寄贈も行いました。
 昨年コンテナーを寄贈した、ルトゥーリ高校が“図書プロジェクト”のリーダー的存在であり、目覚ましい活躍を見せているとのことでした。

 最後は、サッカー交流について、報告がありました。
 南アフリカは、サッカー人気がとても高いですが、ボールを含めサッカーで使う道具が満足に揃っていません。THAN球プロジェクトとの共同プロジェクト『バファナ・バニャニャ』プロジェクトを通じ、サッカーボールを多数寄贈しましたが、ボールを手に取った時の子供たちは、目をキラキラ輝かせるそうです。
 また、女子のサッカートーナメントが企画されるほど、女子のレベルが高いと、報告がありました。

 最後に、平林さんから、菜園プロジェクトにしてもサッカー交流にしても、とても女子が頑張っているので、「頑張れ、ズールー男子」とエールを送り、報告会は終了しました。

(鯨井)


2014-01-20 南アフリカ

ガンバレ 畑男子!

現行のJICA有機菜園プロジェクトの主な目的は、人育てです。 有機野菜を育てながら、地域で普及できる人を育てていきます。

TAAAの巡回農業指導員は、各対象校の畑で、菜園委員会生徒へ丁寧な実地指導を行っています。 指導をうけた菜園委員会生徒が、リーダーとなり、他の生徒や家族に菜園技術を教えられるようにするためです。 

学校菜園の実地指導は、いつも賑やかに快活に行われています。 写真のインククコ小学校(シニア・プライマリ・スクール)は、先行プロジェクトでは、対象校ではなかったのですが、対象校だったワイルダー小学校(ジュニア・プライマリ・スクール)の生徒たちが上がってくる学校です。
ワイルダー小で、菜園活動が大好きになった畑男子は、今インククコ小で、菜園リーダーとして大活躍してくれています。

地元の若者たちは、学校卒業後、地元に産業がないために都会にでても、なかなか職が見つかりません。 特に若い男性の行き場のなさ、失業率の高さは南アフリカで大きな社会問題になっています。

小規模農業、とくに牛糞など周辺のものを利用してコストのかからない有機農業は、困窮はしていても、農業に適した気候と土壌をもつ対象地域では、男性が地元で自活する手段としての大きな可能性があります。
菜園が大好きになった畑男子たちが、将来この地域を拓いてくれることを願ってやみません。

(平林・久我)


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